はじめに
1号ファンドを立ち上げたVCのうち、2号ファンドを継続して立ち上げることができる割合はは63%。2024年時点の米国データでは、約3分の1のVCが次のファンドを作ることができずにファンドを閉じることとなります。なぜ「続ける」ことには高い壁があるのでしょうか。
今回は、VCを長く続けるために必要な条件を、組織、ファンドパフォーマンス、世代交代という3つの観点から考えます。さらに、ファーストライトキャピタルが掲げる「100年VC」という考え方を通じて、VCという組織そのものが長く成長し続けるために何が必要なのかを掘り下げていきます。
※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」シーズン3第23回をもとに作成しました。番組では、VCが次の世代へバトンを渡しながら長く続いていくための条件についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。
「2号ファンドの壁」を越えられないVCに何が起きているのか [05:30-7:40]
1号ファンドから2号ファンドへ進めない理由について、岩澤がまず挙げるのが「組織崩壊」です。キャピタリストが相次いで辞めたり、GPの解体によってチームそのものが維持できなくなると、次のファンドを立ち上げる前に組織の存続が困難になります。
もう一つが「パフォーマンス」です。VCの数が増え、毎年多くのファンドが立ち上がる中、LPも投資先の選択を迫られています。現在運用しているファンドで十分な成果が出ていなければ、次のファンドで出資を引き出すのは容易ではありません。
ここで重要になるのが、ファンドの成果を示す指標です。TVPIは、LPから預かった資金が現在どれだけの価値になっているかを見る指標で、DPIはそのうち実際に現金としてLPへ返還できた金額を示します。こうした数字を通じて、次のファンドを任せられるかどうかが判断されます。
ただし、岩澤はマクロ環境そのものを、VCが続けられない決定的な理由とは捉えていません。金利や市場環境によってファンドレイズが難しい時期はあり、それでも厳しい環境の中でLPから信頼を得て、次のファンドを立ち上げているVCは存在します。つまり、外部環境以上に「信頼を積み上げられる組織であるか」という真価が問われているのです。
長く続くVCに共通する「世代交代」という条件 [7:40-12:00]
では、長く続くVCにはどのような共通点があるのでしょうか。岩澤が過去にグロービス・キャピタル・パートナーズ共同創業パートナーである仮屋薗氏やGMOベンチャーパートナーズ取締役/ファウンディングパートナーの村松氏に同じ質問をしたところ、二人から全く同じ答えが返ってきました。それは、「世代交代をして、長く続けることができるVCがトップティアVCである」という考え方です。
VCは、1本のファンドが5年、ファンドレイズの間隔も4〜5年という長いサイクルで動きます。だからこそ、次の世代がいつGPになるのかという設計は企業以上に難しいテーマと言えます。岩澤は、海外や日本の老舗VCを見ても、キャピタリストになってから6〜8年ほどでGPを目指すことが一つの目安になると考えています。
ここで起きやすいのが、組織側のGP育成方針と、若手キャピタリストのキャリアパスのずれです。次の世代が自分の将来を描けなければ、組織の外へ出て独立することになります。個々のキャピタリストが成長しても、それが母体となるVCの継続につながらなければ、組織としての世代交代は進まず、真の意味での持続的な組織とは言えません。
「100年VC」という長期戦略 [12:00-17:00]
ファーストライトキャピタルが掲げる「事業家による起業家のための100年VC」というコーポレートミッションも、この問題意識とつながっています。
岩澤にとって100年という数字は、単なる企業の長寿化を目的としているわけではありません。新産業をつくるには、1本のファンドの5年や10年という時間では短すぎます。新しい産業が立ち上がり、成長するまで伴走するのであれば、VCそのものが数十年、100年という単位で続く息の長い組織構造が不可欠になります。
そのために、投資判断や成長支援の考え方を創業者の経験だけに依存せず、言語化して次の世代に引き継ぐことが重要になります。一方で、岩澤は「言語化しすぎること」にも危うさがあると考えています。「ファーストライトらしさ」を細かく定義しすぎると、それをなぞること自体が目的になり、組織の柔軟性を阻害しかねないからです。
理想とするのは、誰が起業家やLP、他のVCと会っても「ファーストライトらしさ」が自然と伝わること。言葉にできる再現性だけでなく、姿勢や空気感といった「非言語のカルチャー」まで語り継げる組織こそが、真の「100年VC」のあり方と言えます。
VCの成長に必要なのは、ファンドの先にある「機能」をつくること [17:00-]
真島は「VCそのものが非連続に成長していくためには何が必要なのか」という点を最後に問いかけました。
岩澤は、ファンドは「お金を預かる箱」であり、VCの一つの機能に過ぎないと整理します。もちろん、ファンドを継続して立ち上げること、そのためにLPとの信頼関係を築くことは大前提です。しかし、それだけにとどまりません。
資本・技術・人をつなぐ結節点としての機能、スタートアップの社会実装を支える基盤、さらに官民連携や外部への発信を担うシンクタンク的なリサーチ機能。新産業を立ち上げるために必要な機能を、VCの中にどう組み込んでいくかが重要になります。
その先にあるのは、「何をするためのファンドなのか」という問いです。リターンを出してLPから信頼を得ることは出発点であり、その資金とファンドという器を使って何を実現したいのかが、VCとしての軸になります。岩澤にとって、それが明確であれば、「こういうことをやりたいならファーストライトだ」と起業家から選ばれる理由にもつながります。
おわりに
VCが長く続くためには、次のファンドをつくる力だけでは足りません。組織を維持し、十分なパフォーマンスを出し、次の世代へバトンを渡す。そして、目の前のファンドを成功させるだけでなく、その先に新産業をつくるための機能まで設計していくことが必要です。
最後に岩澤が示したのは、「主役は我々ではない」という姿勢でした。主役は起業家であり、そこから生まれる新しい産業です。VCはその裏側で、人や資本をつなぎ、社会実装を支え、活動を次の世代へつないでいく。長く続くVCとは、目立ち続ける組織ではなく、時代や人が変わっても新しい挑戦を支えられる組織なのではないでしょうか。
※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」シーズン3第23回をもとに作成しました。番組では、VCが次の世代へバトンを渡しながら長く続いていくための条件についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。
執筆 : 岩澤 脩 | ファーストライト・キャピタル 代表取締役・マネージングパートナー
編集 : ファーストライト・キャピタル | リサーチ・チーム
2026.8.31
ファーストライト・キャピタルでは、所属するベンチャーキャピタリスト、スペシャリストによる国内外のスタートアップトレンド、実体験にもとづく実践的なコンテンツを定期的に配信しています。コンテンツに関するご質問やベンチャーキャピタリストへのご相談、取材等のご依頼はCONTACTページからご連絡ください。
ファーストライト・キャピタルのSNSアカウントのフォローはこちらから!