一覧に戻る

【VIVA VC シーズン3 第22回】採用を制する者が、スタートアップの成長を制す

2026.08.25

Podcast

【VIVA VC シーズン3 第22回】採用を制する者が、スタートアップの成長を制す

はじめに

スタートアップが資金調達で得た資金の使い道をたどると、広告宣伝費と並んで大きな割合を占めるのが人件費・採用費用です。

資産を多く持たないスタートアップにとっては、人材への投資こそが最大の資金投下であることが多く、それゆえに採用活動の成否が事業成功を決めると言っても過言ではありません。

ただ、マーケティングやプロダクトの作り方に比べると、採用について語られる機会はこれまで多くありませんでした。世に出る情報の多くは成功事例で、失敗したときに何が起きるのかは、ほとんど表に出てこないのが実情です。罠の多いこの領域を、今回は失敗談ともに掘り下げます。

※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」シーズン3第22回をもとに作成しました。番組では、スタートアップの採用の難しさと失敗のパターンについてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

スキルに頼って採ると、必ずつまずく [06:00-12:20]

岩澤はユーザベース社でSPEEDAアジア事業を率いていた時期、毎年10人から20人を採用していました。面接した人数は、通算で200人ほどにのぼります。海外事業では苦い経験もしました。

そのなかで繰り返してきた失敗が「スキル重視で採ってしまうこと」です。カルチャーが合わない採用は、入った瞬間に分かるため、分かりやすい失敗です。問題が起きやすいのは、バリューも一定合っていて、人として魅力的でもある。ただ、その人が持つスキルに頼りたくて採ってしまう場合です。

例えば、営業職の採用のケース。立ち上げ期の営業は孤独ですから、業界内に多くの顧客を知っている人、大手企業や大手SIでエンタープライズ営業を経験してきた人が、非常に良く見えます。しかしそうした人が得意とするのは、完成された商品やサービスを、同じ属性の顧客に提案していくことです。ゼロから事業を立ち上げる局面では、プロダクトが成熟していないなかで「こういう世界観を実現したい、一年後にはここまで到達するので思いに賭けてほしい」というビジョン売りが求められます。

一方で、そこで結果が出ないと、「プロダクトに投資してくれなかった」「マーケティングの予算がなかった」という言葉が出はじめ、創業者とぶつかることがよくあります。不確実性が高く、チームもプロダクトも変化し続ける環境への対応力。これが面接で見落とされがちなポイントです。

厄介なのは、この失敗は度々繰り返されてしまうことです。研修や面接のトレーニングなどで一時的に是正されますが、しばらくすると同じことが起きてしまう。さまざまなスタートアップでも、ほぼ全員が同じ轍の上を走っていきます。

「バリュー・ミッション・スキル」という順番 [12:21-14:00]

岩澤が挙げるのは、 バリュー、ミッション、スキルの順に見るという原則です。バリューは、その会社が大事にしている価値観やカルチャーへの共感があるか、それを体現できる人か。ミッションは、会社が5年10年で目指す方向性と、本人が人生を通して成し遂げたいことが近いか。スキルフィットを見るのは、その土台があってはじめてです。

ところが実際には、逆から見る企業が少なくありません。スキルは100%、場合によっては120%合っている、バリューは70%だがなんとかなるだろう、という判断で入社が決まる。「この役割が今すぐ欲しい」「この事業目標を達成しなければならない」と時間に追い込まれるほど、スキルに焦点が移っていきます。採用候補者の特定の職務経歴に依存した問題ではなく、優先順位を取り違えたときに必ず問題が起きる、ということです。

合わないと分かったとき、どの順で手を打つか[14:01-16:00]

海外では、フィットしなければ辞めるということが前提として共有されており、入社する側も同じマインドで臨みます。一方、日本では正社員として迎えた人を解雇することは容易ではありません。だからこそ、入り口である面接で何をすり合わせるかが決定的に重要になります。

そのうえで、ミスマッチが判明したときの分岐点はバリューとミッションです。ここが全く合わないのであれば、双方にとって構造的なストレスが残り続けます。合っているがスキルフィットが足りない場合は、チームのなかに育成の環境があるかを見る。まずはチームを変えて成長できる余地を探し、それでも難しければ、互いに違う道を選ぶ。この段階を踏むことが現実的です。 

経営者が面接から離れてよいのは、いつか [16:01-]

経営者が採用にいつまで関わるべきか。答えは明快で、物理的に関与できない組織規模になるまでは、面接に入り続けるべき、というのが岩澤の主張です。目安としては100人、場合によっては200人程度までなら、入社する全員と面接することは可能です。

経営者が持つアンテナや、そのときに覚える違和感には、経験に基づいたアラートとしての価値があります。カルチャーフィットやバリューフィットを確かめるうえで、この直感は大きな意味を持ちます。もちろん、同じ見極めができる人事やチームリーダーがいるのであれば、任せていく判断もあり得ます。

逆に、バリューフィットしていないマネージャーが一人でも面接に入ると、そこからネガティブなカルチャーとバリューの再生産が始まります。それが動き出すと、チーム崩壊は驚くほどの速さで進み、オープンなコミュニケーションが成り立たない組織が社内に生まれてしまいます。 。

おわりに

採用を100発100中で成功させている企業は、ほとんど存在しません。だからこそ問われるのは、入り口で優先順位を誤らないこと、そして合わなかったときに段階を踏んで手を打つことです。

この構図は、採用される側にとっても示唆があります。スキルが評価されて内定を得たとしても、その会社が大事にしている価値観や、目指している方向性が自分と重なっているか。入り口で確かめられなかったものは、入った後に構造的なストレスとして表れてきます。会社を選ぶ側にとっても、順番は同じなのです。

※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」シーズン3第22回をもとに作成しました。番組では、スタートアップの採用の難しさと失敗のパターンについてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

執筆 : 岩澤 脩 | ファーストライト・キャピタル 代表取締役・マネージングパートナー
編集 : ファーストライト・キャピタル | リサーチ・チーム
2026.8.25

Top Insights Podcast 【VIVA VC シーズン3 第22回】採用を制する者が、スタートアップの成長を制す

Newsletter

ファーストライトから最新のニュース・トレンドをお届けします。