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【VIVA VC シーズン3 第17回】成功率5%の世界で心を保つ。VCは「結果が出ない時」とどう向き合う?

2026.07.18

Podcast

【VIVA VC シーズン3 第17回】成功率5%の世界で心を保つ。VCは「結果が出ない時」とどう向き合う?

はじめに

VC が検討したスタートアップのうち、実際に投資に至るのはわずか5%。以前の回でも触 れたこの数字が示すのは、投資という仕事が「思い通りにならないこと」の連続だという現実です。そして投資したあとも、期待をかけた投資先がうまくいかない場面のほうが、うまくいく場面よりずっと多いのが実情です。 

そんな時に岩澤が大切にしているのは、少し意外なスタンスです。「こうあるべき」という 言葉は、相手に刺さっていない時に限って言いたくなるもの。でも刺さっていない時に何を 言っても、相手には入っていきません。

期待をかけた投資先がうまくいかない時、キャピタリストはどう感情を整理し、どう関わっていくのか。今回のVIVA VC は、この「思い通りにならないこと」との向き合い方を掘り下げます。

※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」シーズン3第17回をもとに作成しました。番組では、投資先がうまくいかない時の感情整理と困難への向き合い方についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

うまくいかない時こそ、引きずらない [02:30-06:00]

10年近い付き合いのある早船から見ても、岩澤がネガティブになったり、負の感情に沈んでいたりする姿を見たことはほとんどないといいます。

VCの仕事で悩む時は、ファンドレイズで出資してくれるはずだった人がしてくれなかった時、あるいは投資したかったのにできなかった時。そういう瞬間には心に来るものがあると岩澤も認めます。しかし、それを引きずることはありません。

投資先の95%以上が成功しない仕事です。そのすべてに一喜一憂していられません。期待をかけて投資しても思い通りにならないのが日常茶飯事だからこそ、引きずらないマインドが必要になります。

一番怖いのは、自分で自分たちの限界を決めてしまうこと [06:00-7:20]

ひとくちに「うまくいかない」と言っても、そのレベルはさまざまです。資金がまったく回収できそうにないという深刻なものから、日々の些細なつまずきまで幅があります。

シードからアーリーステージと呼ばれる比較的若いスタートアップの場合、典型的なのは売上が思うように伸びないケース、想定していたプロダクトがエンジニアを集められずに作れないケース、そして組織が崩壊するケースです。

このうち売上が伸びないといった課題は、ある程度フォローの余地があります。顧客候補を紹介するなど、キャピタリストがサポートできる部分があるからです。

しかし岩澤が「一番取り返しがつかない」と語るのは、もっと内面的な問題です。それは、起業家が自分で自分たちの限界を決めてしまう時。

売上が上がらない、プロダクトが作れないという状況が続くと、「自分たちはできないかもしれない」という前提が心の中に生まれてしまう。それでも資金調達をしている以上、続けなければいけない。そうして、勝手な自己イメージに縛られていく。この自己イメージこそが、最も怖いものだと岩澤は考えています。

「4E + P」一番厳しい時こそ、明るく元気に未来を示せ [07:20-10:00]

では、そうした局面で岩澤自身はどんな気持ちでスタートアップと接しているのか。その根っこには、一つの原体験があります。

ユーザベース時代、岩澤は海外事業を担っていました。一人でアジアを開拓し、一人で数字を背負う。自分の数字が達成できなければIPOもできない。そんな極限まで追い込まれた時に、創業者の新野氏から告げられた言葉があります。

「ジャック・ウェルチの4Eを知っているか」

GEの伝説的経営者ジャック・ウェルチは、成功する経営者の条件として「4E + P」を挙げているといいます。

4Eとは、Energy(エナジー)、Energize(エナジャイズ)、Edge(エッジ)、Execution(エグゼキューション)。エナジーは熱意にあふれ、エネルギーレベルが高いこと。エナジャイズは周りの人を元気にすること。エッジは難しい判断ができること。エグゼキューションはそれをやり切ること。この4つは絶対に備えていなければならないとされます。

そして卓越した経営者は、これにPを加えて持っている。そのPとは、Passion(パッション)です。

つまり5つの要素のうち3つが、元気や情熱に関わるものだということ。それだけ「元気」が経営者にとって根幹をなすという話です。この話を聞いて以来、岩澤は元気であることを強く意識するようになりました。

だからこそ、特にトップである創業者に対しては、こう伝えます。「一番厳しい時にこそ、明るく元気に未来を示せ」と。

チームが落ち込んだ時のアドバイスは「まず寝る」 [10:00-13:00]

投資先だけでなく、ファーストライトキャピタルのメンバーが投資先のことで悩んでいる時もあります。そうした時、岩澤はどうサポートするのか。

悩んでいる人を見ていると、たいてい思考が混乱しています。客観的に見ればじゅうぶん解決可能な問題なのに、一人で思い詰めて、ああでもないこうでもないと堂々巡りになっている。そういうケースが多いといいます。

そこで岩澤がまずアドバイスするのは、意外にもシンプルなものです、それは「寝る」こと。

思い詰めている時は、たいてい睡眠時間が取れていません。だからまず寝る。そして一歩、その事象から引いてみる。物事をシンプルに考える。これが基本的な処方箋です。

もう一つ、起業家に伝えたことがあるのが、経営学者ドラッカーの考え方です。ドラッカーは、成果を上げるための実践的な能力を5つ挙げています。

第一に、自分の時間が何にとらわれているかを知り、残されたわずかな時間を体系的に管理すること。第二に、外部への貢献に焦点を合わせること。第三に、特に強みがあるものを中心に据えること。第四に、優先順位を決めて、優れた仕事が際立った成果を上げる領域に集中すること。第五に、成果を上げるよう意思決定を行うこと。

いろいろと言っていますが、究極的には「今やっていることをリストアップし、やらないことを決め、その上で自分の強みがある領域に集中しよう」ということです。混乱した時ほど、やることを絞り込む。この考え方は、起業家にもチームにも共通して効く整理術です。

「当たり前の基準」を引き上げる [13:00-15:00]

興味深いのは、キャピタリストが起業家に対してできることが、意外なほど「具体的なアドバイス」ではないという点です。

プロダクトをこうした方がいい、といった具体的な打ち手は、起業家自身が一番考えています。伴走するキャピタリストの役割は、そこではありません。起業家が自分自身を客観視できるよう、その視点をフォローすること。振り返ってみると、岩澤のアドバイスはそういう性質のものが多いといいます。

では、そうした相手に対してあるべきスタンスは何か。岩澤は2つ挙げます。

一つは、メタ認知のきっかけを作ってあげること。もう一つは、最初に「当たり前の基準」を作ってあげることです。

一度作ってしまった「当たり前」を超えていくのは、なかなか難しい。たとえばサッカーの日本代表も、「絶対にブラジルには勝てない」と思っていれば、やはり勝てなくなってしまう。逆に「自分たちは優勝する」という勢いで臨めば、いい戦いができることもある。だからこそ、当たり前の基準そのものを引き上げてあげることが大切なのです。

先人に学ぶ、困難と向き合う5つの型 [15:00-終]

うまくいかない時の考え方には、先人たちから学べるポイントがあります。今回のテーマを話すにあたって、岩澤が過去に先輩たちから言われてきたことを見直してみると、共通する型が5つ浮かび上がってきました。

一つ目は、よく寝ること。困った時ほど、まず睡眠をしっかり取る。

二つ目は、シンプルに考えること。ドラッカーの整理術のように、複雑なものをできるだけシンプルに捉える。

三つ目は、仲間に頼ること。困っている時こそ弱みを見せて、仲間に頼る。

四つ目は、行動すること。とにかく顧客に会うなど、行動量を増やしていく。行動すれば、いいフィードバックや次に向けたヒントが得られるからです。

五つ目は、未来を考えること。今この瞬間の苦しみではなく、その先にある未来を妄想する。ある種のイメージトレーニングです。

寝る、シンプルに考える、仲間に頼る、行動する、未来を考える。この5つは、多くの先人が口を揃えて語ってきたことでした。

おわりに

VCの仕事は、思い通りにならないことの連続です。期待をかけた投資先がうまくいかない場面のほうが、うまくいく場面よりずっと多い。だからこそ、感情をどう整理し、どう関わり続けるかが問われます。

今回の対話が示すのは、その本質がVC業界に限られたものではないということです。厳しい時こそ元気に未来を示すこと。自分たちで限界を決めてしまわないこと。やらないことを決めて強みに集中すること。そして、寝る、シンプルに考える、仲間に頼る、行動する、未来を考えるという5つの型。

これらは、仕事で壁にぶつかった時、あるいは人生の何かがうまくいかない時に、そのまま立ち返ることのできる視点です。コントロールできないものに期待をかけ、思い通りにならない現実と向き合う。それは投資であれ、子育てであれ、私たちの日常であれ、変わらない構図なのかもしれません。

※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」シーズン3第17回をもとに作成しました。番組では、投資先がうまくいかない時の感情整理と困難への向き合い方についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

執筆 : 岩澤 脩 | ファーストライト・キャピタル 代表取締役・マネージングパートナー
編集 : ファーストライト・キャピタル | リサーチ・チーム
2026.7.20

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