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【VIVA VC シーズン3 第11回】VC運営の「大ピンチ」3選。修羅場の乗り越え方

2026.06.16

Podcast

【VIVA VC シーズン3 第11回】VC運営の「大ピンチ」3選。修羅場の乗り越え方

はじめに

ファンドレイズが決まりかけていた矢先、アンカーLPの2社が時を同じくして離脱する。創業3年目に組織崩壊が起こる。投資先で不正会計が発覚する。ベンチャーキャピタル運営の現場では、こうした「大ピンチ」が定期的に訪れます。

ポジティブに語られがちなVCという仕事ですが、その裏側では数々の修羅場をどう乗り越えるかが問われ続けています。今回のVIVA VCは、ファーストライトキャピタル代表の岩澤がファンド運営の中で経験した「大ピンチ」を3つ取り上げ、トラブルシューティングの本質に迫ります。

チーフアナリスト・早船は、岩澤と10年以上の付き合いの中で、その「球際の強さ」を一貫して感じてきたといいます。岩澤本人が尊敬するリーダー像として挙げるのは、サッカー選手のドゥンガと闘莉王。ピンチに対して体ごとぶつかりに行くようなスタイルは、岩澤のキャリアを通じた一貫した特徴です。

※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」シーズン3第11回をもとに作成しました。番組では、ファンド運営における大ピンチ3選とその乗り越え方についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

トラブルシューティングの基本は「迷う前に動く」 [02:28-06:10]

岩澤のトラブル対応には、ある一貫した特徴があります。それは「迷う暇なく、最善と思われる行動をすぐに取る」という姿勢です。

早船は、岩澤との出会いの最初の記憶として、ある電話の場面を挙げます。2014年頃、早船がスピーダのカスタマーサポート業務を担当していた時のこと。香港側のお客様への対応で不手際が起こった際、香港代表だった岩澤から鬼のような速さで電話がかかってきた、そんな出来事があったといいます。電話越しに漏れてくる声から「マジでどうなってんの?」という強度が伝わってきて、ピンチというのはこういう強度で潰さなければいけないのだ、と早船は学んだそうです。

トラブルが起きているとき、人は往々にして「及び腰」になります。どう対処していいかわからないから、まず様子を見よう、という気持ちが働きます。しかし岩澤は、トラブルが起きた瞬間にあたかもサッカー選手が体をぶつけに行くかのごとく、デュエルしに行く。早船から見た岩澤像は、12年経った今もこの最初の印象から大きく変わっていません。

ただし岩澤自身は、この対処法を意識的に学んだものではないといいます。「全く感じていない。本当にそのエピソードごとに、気づいたらそう動いている」

岩澤の答えはそんなふうにあっさりしたものでした。ここから具体的な3つの大ピンチを通じて、その実像を掘り下げていきます。

大ピンチ① 1号ファンドのアンカーLPが2社同時に離脱 [06:10-12:30]

最初のピンチは、1号ファンドのファンドレイズ局面で訪れました。

5億円ずつ出資してもらうことが「ほぼ決まっていた」アンカーLP2社が、ファンド成立直前に揃って離脱したのです。この2社の出資を前提に、外部の投資家から1億、2億と集まり、20億円規模のファンドが組成される予定でした。それが一気に崩れます。

離脱の理由は、2社それぞれ異なります。1社は、役員レベルでつながりのあった方が「もう大丈夫だよ」と判断していたものの、取締役会か経営会議のいずれかで否決されました。「会社としてのガバナンスが見事に効いた」——岩澤はそう振り返ります。もう1社は、決裁直前に担当者が地方支店へ異動になり、他にボールを持つ人がいないため、ゼロから検討し直すことになりました。

5億円ずつ、計10億円のアンカー出資が消える。

ここでの岩澤の動きは、極めてシンプルでした。「行動量」です。離脱の知らせを受けた瞬間にはもう動いている。当時のユーザーベースのメンバーにヘルプを出し、前職の知り合いにも声をかける。1日何件回るかを決めて、6、70社は訪問したといいます。

迷い始めると、いろんなネガティブなオプションを思いついてしまう。しかし動いていれば、その余裕がない、と岩澤は語ります。「考える時間をなくすための行動量」という発想こそが、岩澤のトラブルシューティングの第一原則です。

なお、ファンドレイズで苦戦した経験はこれだけではありません。2022年6月に2号ファンドを立ち上げた直後、11月に親会社のユーザーベースがカーライルに買収されるTOBが突如発表されました。当然、ファンドレイズは止まります。その時も、その日のうちに動き、3日間ずっと投資先やLP各社に電話をかけて「体制は変わらない」と説明しました。さらにカーライルとも協議を始め、独立して同じ経営体制で投資を続けるという書面を作ってもらうところまで進めています。

大ピンチ② 創業3年目の組織崩壊 [12:30-19:00]

2つ目のピンチは、2021年、立ち上げて3年目に訪れた創業メンバーの離脱と組織崩壊です。

「スタートアップでは創業2、3年目に組織崩壊が起こる」というのは、岩澤が普段から起業家にアドバイスしている内容でした。しかし、自分自身も同じ罠にはまります。

岩澤にとって、この組織崩壊は過去に2、3回経験したものでした。経営者が事業にフォーカスするあまり、組織への目線が薄くなる。この典型的な落とし穴に、警告する側の自分自身が再びはまったわけです。

当時、岩澤は投資もファンドレイズも一人で抱え、ほぼオフィスにもいない状態でした。メンバー2人との1on1もできていなかったといいます。ジュニアキャピタリストは自分のやりたいことを目指して卒業し、アドミニストレーターも適正な給与水準まで上げられなかったことが要因となって離脱しました。

ここでの解決策も、やはり「行動量」です。岩澤が最初に声をかけたのが、ほかでもない早船でした。正社員のフルタイム採用には半年から1年のタイムラグがあります。だからこそ、信頼できる過去の同僚に対して、10%でも20%でもいいから業務委託でサポートしてほしいと依頼する。こうした柔軟な体制を即座に組むことで、事業の停滞を防ぎました。

ただ、この組織崩壊は岩澤の経営スタイルを大きく変える転機にもなりました。

「自分はGPだけではなく、ファーストライトキャピタルのCEOである」そう自覚するようになったのです。GPとして投資パフォーマンスを出せばいい、という発想から、入社してくれたキャピタリストのキャリアに向き合い、成長に伴走する経営者へ。自分が投資先に対してやっていることを、自社の中でもしっかりやらなければいけない、という気づきです。

「創業者の幻想」とは、結果さえ出せばメンバーはついてきてくれるだろうという思い込みです。岩澤はこれを何度も繰り返し、ようやく明確に手放すに至りました。

この転換の後、ファーストライトキャピタルではエトスとして「ダイバーシティファースト」「インサイトドリブン」「いつも企業家に勇気を与える」といった価値観が言語化されます。採用基準も明確にされ、「プロアクティブであること」「セルフアウェアであること」がキャピタリストとしての資質として打ち出されました。どんなに忙しくても、ジュニアキャピタリストとの1on1の時間を取ることもスタートしています。

大ピンチ③ オルツの不正会計 [19:00-23:40]

3つ目のピンチは、ベンチャーキャピタリスト人生を通じて、未来から振り返ってもトップ3に入るであろうものです。投資先であったオルツの不正会計問題です。

この件については、「後世のVCのため、後世の企業家のためにもしっかり振り返らなければいけない」——岩澤はそう語ります。詳細については、岩澤の書籍『だからベンチャーキャピタルはやめられない』の中で記載されている内容です。

昨年のスタートアップ業界において、最大級に重いトピックの一つでもありました。VC業界全体としても、会社としても、キャピタリスト個人としても、次につなげていかなければなりません。

トラブルを「楽しむ」という発想 [23:40-終]

岩澤はトラブルが起きた状況を、ある種楽しんでいる側面があります。文化祭前日のような感覚で「また来たか、トラブルどんと来い」と構える。仲間と一緒に乗り越えていくプロセスが楽しいし、解決に向かっていくこと自体が快感ですらある、そのような感覚です。

ネガティブにばかりピンチを捉えていては、VCという長期戦の仕事は続きません。だからこそ「文化的にボールを取りに行く」「体をぶつけに行く喜びを感じながらトラブルシューティングをする」という姿勢が、VCをやめられない理由の一つにもなっているのです。

おわりに

ファンド運営における大ピンチ3選を通じて見えてきたのは、トラブル対応の本質が「迷う前に動く」という極めてシンプルな原則にあるということです。そして、その行動量の背景には、ピンチそのものを楽しもうとする心構えがあります。

社会人になりたての時期や若手のうちは、トラブルが起きたときの心構えを誰かから教わる機会はそう多くありません。様子を見たい、慎重に判断したい、という気持ちは自然なものです。しかし、迷っているうちにネガティブな選択肢ばかりが浮かんでくる経験は、誰しもあるのではないでしょうか。

ピンチを楽しめる人になれるかどうか。それが、修羅場を乗り越えながらキャリアを続けていくための、一つのヒントになるかもしれません。

※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」シーズン3第11回をもとに作成しました。番組では、ファンド運営における大ピンチ3選とその乗り越え方についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

執筆 : 岩澤 脩 | ファーストライト・キャピタル 代表取締役・マネージングパートナー
編集 : ファーストライト・キャピタル | リサーチ・チーム
2026.6.17

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