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【VIVA VC 第6回】「35歳でキャピタリストになる」と宣言。VCを目指した原点とは?岩澤のキャリア・前編

2025.02.03

Podcast

【VIVA VC 第6回】「35歳でキャピタリストになる」と宣言。VCを目指した原点とは?岩澤のキャリア・前編

はじめに

今回は、ファーストライト・キャピタル代表の岩澤脩が、ベンチャーキャピタリストになるまでのキャリアを振り返ります。20年前、大学生のときに偶然出会ったVC業界。その後、金融、事業再生、スタートアップと、異なる業界での経験を重ねながら、最終的にVCとしての道を選んだ経緯をお話しします。

※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」第6回を元に作成しました。

VCとの出会い – 35歳の約束

大学4年生の時、偶然の機会からVCでインターンをすることになりました。フルタイムで働いており、LPへの報告資料作成や投資家集会への参加など、様々な実務に関わっていました。

卒業を控えたある日、当時のVC代表から「なんでもいいから目標を立てろ」と言われました。その場で、半ば強制的に「35歳でVCを始める」と宣言することになったのです。その瞬間から、漠然としていた将来像が具体的な目標へと変わりました。VCになるために必要なことを考えた結果、まずは金融やコンサルの世界で基礎を学び、その後スタートアップの現場で実践経験を積む。そんなキャリアプランが頭の中に描かれていきました。

金融の世界へ – リーマン・ブラザーズでの経験

金融の世界への第一歩として選んだのが、外資系証券会社のリーマン・ブラザーズでした。証券アナリストとして化学業界の企業分析や財務分析に従事する中で、企業を徹底的に調べ上げて本質を理解する力を養っていきました。

しかし、入社2年目にリーマン・ショックが発生。金融危機によって多くの企業が破綻していくなかで、キャリアチェンジを決断しました。せっかくなら真逆のところに行こうと思い、リーマン・ブラザーズでのグローバル金融から野村総合研究所で地域企業を現場で支えようと思いました。

事業再生の現場へ – 野村総合研究所での経験

次に向かったのは事業再生の世界でした。野村総合研究所で地域企業の再生支援に携わる中で、企業の本質的な価値について深く考えさせられました。

特に印象に残っているのは、ある地方企業の案件です。その会社の代表は、窓の外の「雪吊り」(松の木に雪の重さで倒れないよう支えをつける伝統技術)を見せながら、こう語りました。「この会社がなくなれば、この伝統も途絶えてしまう。なんとか守っていきたい」。

この言葉に、企業とは単なる利益を生み出す組織ではなく、世代を超えてアイデンティティやカルチャーを継承していく重要な役割があるのだと気づかされました。

スタートアップの世界へ – ユーザベースでの経験

野村総合研究所での仕事にやりがいを感じ、VCの夢は一時忘れかけていました。そんな中、社内のデータベース選定プロジェクトでユーザベースと出会います。創業者の熱意とプロダクトの可能性に惹かれました。このプロダクトだったら本当に自分が起業したというのと同じ強度で事業に関われるのではないかと思い、当時20人弱だった会社に、外部からの初期メンバーとして参画を決意しました。

しかし、大企業からスタートアップへの転身は、想像以上のカルチャーショックを伴うものでした。特に印象的だったのは、ユーザーベースの「組織崩壊」です。新しい世代のメンバーが入っていく中で「なんとか成果を出さなければ」という強い使命感から、創業メンバーと新しい世代との軋轢を生み、そのギャップから組織崩壊が起こりました。

アジア展開の経験 – 起業の視点の獲得

2013年、次なる挑戦として香港での事業立ち上げを任されました。しかし、意気揚々と携えた英語版プロダクトは全く売れず、現地での営業開拓も思うように進みません。本当に大変な毎日でした。しかし、そこで経験したハードシングスが結果的には投資先の起業家の方たちに寄り添える視点に繋がっていると思います。

多国籍チームのマネジメントにも苦心しました。各国の国民性に合わせたアプローチを試みましたが、どれも上手くいきません。しかし、ビジョンとバリューを伝えること、大切にしているカルチャーや価値観を伝えること、そしてチームメンバーの多様性を受け入れることでワンチームを作れるということを学びました。

また、アジアのスタートアップ最前線に身を置く中で、日本のプレゼンスの低さも痛感しました。アジア最大級のスタートアップカンファレンスに日本企業だけが声がかからない現実。この経験が、「日本のスタートアップを世界の打席に立たせたい」という、私のVCとしての根本的な動機となっています。

おわりに

これまでの経験を通じて、企業の本質とは何かを考え続けてきました。そして今、私はVCとして、次世代を担うスタートアップを支援する立場にいます。

次回は、これらの経験を経て、なぜ最終的にVCの道を選択したのか、についてお話しします。

(この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」の第6回を元に作成しています。番組では、より詳しい議論を展開していますので、ぜひご視聴ください。)


編集:ファーストライト・キャピタル SaaS Research Team
2025.2.3

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