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【VIVA VC 第5回】人口減少こそチャンス ~ ファーストライトが見据える日本発イノベーションの可能性 ~

2025.01.26

Podcast

【VIVA VC 第5回】人口減少こそチャンス ~ ファーストライトが見据える日本発イノベーションの可能性 ~

はじめに

2024年11月、UB Venturesはファーストライト・キャピタルへと社名を変更しました。この新しい名前には、私たちのビジョンと決意が込められています。企業家の覚悟を最初に照らし、産業の幕開けに立ち会う存在でありたい――この想いを「ファーストライト」という言葉に託しました。

本記事では、日本が直面する人口減少という課題を、いかにイノベーションのチャンスに変えるかについて、私たちファーストライト・キャピタルの視点をお伝えします。

※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第5回をもとに作成しました。番組では、人口減少とイノベーションの可能性についてさらに深く議論しています。ぜひご視聴ください。

世界最速の人口減少に直面する日本

多くの人にとって、「人口減少」という言葉はネガティブに響くかもしれません。実際、データはその深刻さを物語っています。

2010年には8000万人以上だった日本の労働力人口は、現在7300万人にまで減少しました。この傾向は続き、2035年には6700万人、2045年には5800万人まで減ると予測されています。

これは20年後には、現在の5人に1人の労働力が失われることを意味します。この急速な人口減少は世界でも類を見ないペースです。

しかし、こうした厳しい状況の中でも、私たちはそこに大きなチャンスを見出しています。

なぜ人口減少はスタートアップにとって千載一遇の好機か

「人手不足倒産」や「労働力不足」といったニュースを耳にすることが増えていますが、これらの課題が日本発のイノベーションを生む土壌になると私たちは考えています。

これまで日本のスタートアップは、海外で成功したビジネスモデルを国内に導入するという流れが一般的でした。SaaS、Web3、最近では生成AIなど、多くの領域で「海外発のイノベーション」を追いかけるような形でした。しかし、このアプローチだけでは世界に通用する日本発のイノベーションは生まれにくいのです。

2020年にIMFが発表した「シュリンコノミクス(縮小の経済)」のレポート*1は、私たちの視点を大きく変えるきっかけとなりました。このレポートでは、日本が人口減少に伴う課題の「世界の実験室」であると指摘されています。

これを逆手に取れば、日本で生まれた課題解決型のソリューションが世界へと展開できる可能性があります。これは、日本がグローバル市場で存在感を高める絶好のチャンスです。

*1 IMFのレポート「Shrinkonomics

「人口減少」が進む中でのテクノロジーの可能性

日本の人口減少は避けられない現実です。この中で経済成長を維持し、豊かな社会を築くためには、GDPを押し上げることが必要です。GDPは「労働生産性×人口」で表されますが、短期的に人口を増やすことは難しい。となれば、テクノロジーを活用して労働生産性を上げることが、現実的な解決策となります。

私たちは特に建設業、製造業、医療、教育といった基幹産業におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)に注目しています。

例えば次のようなソリューションが、今後の鍵を握ると考えています:

  • 360度カメラとAIを活用した建設現場の管理効率化
  • 歯科医院の業務効率を改善するシステム
  • 教員の授業準備や採点業務を支援するAIツール

これらは一見、地味な領域かもしれません。しかし、人手不足が深刻化する中で、こうしたソリューションへのニーズは確実に高まっています。

日本には「課題先進国」としての優位性がある

「でも、日本にそんな技術力があるのか?」という声を耳にすることもあります。確かに、純粋な技術力だけを見れば、グローバルな競争は簡単ではないかもしれません。しかし、私たちが注目しているのは技術そのものではなく、「市場の優位性」です。

日本は世界で最も早く人口減少という課題に直面しています。特に地方における建設業、製造業、教育、医療の人手不足は、他国に先駆けた課題であり、その解決策を先んじて構築できる可能性があります。

韓国やドイツ、中国など、多くの国々が今後同様の人口減少の課題に直面することが予測されています。日本発のソリューションは、同じ課題に直面する他国へグローバルに展開する大きなチャンスを秘めています。

歴史が教えてくれる日本の底力

実は、日本は過去にも人口減少をチャンスに変えた歴史があります。

江戸時代中期から後期(1730–1800年)には、飢饉や都市への人口集中、晩婚化による少子化などで人口が減少しましたが、農具の進化や品種改良といった技術革新で生産性を高めることに成功しました。その結果、日本はアジアで最も一人当たりGDPが高い国となり、明治維新の近代化へと繋がったのです。この歴史が示すように、人口減少はイノベーションのきっかけとなり得るのです。

おわりに

今、日本のスタートアップ界は変わりつつあります。かつて香港に駐在していた時期、アジアの中で日本のスタートアップの存在感は決して大きくありませんでした。しかし今、多くの海外投資家が日本市場に注目し始めています。

私たちファーストライト・キャピタルは、その名の通り、新しい産業の「夜明け」に光を当てる存在でありたい。人口減少という課題に直面する今こそ、日本発のイノベーションが世界の舞台で輝くチャンスなのだと、私は確信しています。

(この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」の第5回を元に作成しています。番組では、より詳しい議論を展開していますので、ぜひご視聴ください。)


編集:ファーストライト・キャピタル SaaS Research Team
2025.1.26

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