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【VIVA VC 第3回】 知ってもらわないと始まらない ~VCと起業家との出会い方について~

2025.01.12

Podcast

【VIVA VC 第3回】 知ってもらわないと始まらない ~VCと起業家との出会い方について~

はじめに

ベンチャーキャピタル(以下VC)の仕事は、起業家との出会いから始まります。

しかし、実際にはどのように出会いを作っているのでしょうか?今回は、ファーストライト・キャピタルの代表として日々感じている「起業家との出会い方」をメインにお話しします。

※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」の第3回を元に作成しています。番組では、VCの仕事についてより詳しくお話ししています。ぜひご視聴ください。

起業家との出会い方は様々

まず、現在日本には恐らく300社以上のVCが存在します。起業家側から見ると、非常に多くある選択肢の中から「このVCに投資してもらおう」と決めることになります。

では、私たちVCは具体的にどうやって起業家と出会うのか。

実はこれが意外と難しく、決定打がないのが現状ですが、主な例を挙げると以下のようなパターンがあります。

  • スタートアップイベントで出会う
  • 他のVCからの紹介
  • 知人や前職の同僚が起業して相談を受ける
  • SNSやブログを見て直接連絡が来る
  • 既存の投資先からの紹介

最近では、VC自身が積極的にコンテンツを発信したり、コミュニティを運営することで接点を作る動きも増えています。

このような取り組みにより、VCは単なる資金提供者としてだけでなく、共に事業を成長させるパートナーとして認識されることが増えています。

新しい出会いの潮流:スタートアップスタジオとリバースピッチ

最近では、従来のVCの枠を超えた取り組みも増えています。

例えば「スタートアップスタジオ」という形式。これは、VCが起業家のアイデア段階から深く関わり、一緒に事業を作り上げていく取り組みです。

例えば、DeNA傘下のデライト・ベンチャーズさんは「ベンチャービルダー」という名前で、DeNAグループのノウハウを活かしながら、起業家と一緒に事業を立ち上げています。

また、XTech(クロステック)さんは社内で新規事業を立ち上げ、うまくいったら外部のVCから資金調達をしてスピンオフさせるという形式を取っています。

また、「リバースピッチ」という取り組みが増えています。これは従来のピッチイベント(起業家がVCに対してプレゼンする)とは逆で、VC側が「うちはこんな特徴があります」「こんなサポートができます」と起業家に対してプレゼンをする形式です。

私が2018年にVCを始めた頃にはなかった形式ですが、今では珍しくありません。それだけ起業家側の選択肢が増え、VCを選ぶ時代になってきているということでしょう。

かつてのVC業界は、情報の非対称性が大きかったです。VCが持っているスタートアップに関する情報や知見は、なかなか外部からはアクセスできないものでした。しかし、SNSの発達により、その非対称性は急速に崩れつつあります。

誰でも情報にアクセスできる時代。だからこそ、VCには情報提供だけでない価値、実際の支援力や信頼関係の構築が重要になってきています。

ファーストライトの起業家との出会い

私たちファーストライトでは、起業家と出会う場がいくつかあります。

1つは「Thinka」という起業家のためのソーシャルクラブを運営しており、定期的に勉強会などのイベントを運営しています。

単なる勉強会だけでなく、起業家同士の深いネットワーク作りを支援しています。また、これ以外にも不定期で起業を志す方のためのゲスト起業家を招いた講演会「VENTURERISE」などを開催しています。

VCにおいて「お金に色がある」とは?

「お金に色はある」というのは、VC業界でよく使われる表現です。

単にお金を出すだけではなく、そのVCならではの特徴や強み、支援の形があるということ。例えば、以下のような特徴があります。

  • 業界の専門性(ヘルスケアに強い、SaaSに詳しいなど)
  • ステージの専門性(シード期が得意、アーリー期が得意など)
  • 支援の特徴(海外展開のサポートが充実しているなど)

私の場合は、以前ユーザベースというスタートアップで事業開発や海外展開を経験したことが、業界の専門性「SaaSに詳しい」として起業家の方々に響いたようです。

これも一つの「色」の出し方だと思います。

最も嬉しい出会い方

実は、個人的に最も嬉しい出会い方があります。それは「既存の投資先からの紹介」です。

私たちの投資先の起業家から「この人に会ってみたら?」と紹介していただけるのは、本当に嬉しいものです。それは単なる紹介以上の意味があります。私たちの支援に満足してくれている、信頼してくれているというサインだからです。

「岩澤がいたからここまでこれた」「岩澤はめちゃくちゃいいから、あなたも会うといいよ」と言って起業家を紹介していただけます。

これはVCをやっていて最大のやりがいの一つです。

おわりに

ハーバード大学の研究結果*1によると、最初の10件の投資のうち1件でもIPO(株式上場)を実現できると、その後の投資先のIPO確率が約8%も上昇するというデータがあります。

最終的に重要なのはやはり「結果を出せるか」ということ。良い結果を出せたVCになれば、自然と起業家たちが集まってきます。

そういう意味では、とてもシビアな世界かもしれません。でも、だからこそやりがいがあります。いかに様々な起業家たちと出会い、良い関係を築けるかどうか、そして目の前の投資先の成長にいかに貢献できるか。それが全ての始まりなのだと、日々実感しています。

この記事を読んで、VCと起業家の出会いについて、少しでもイメージを持っていただければ幸いです。VCという仕事の奥深さ、面白さが少しでも伝われば嬉しく思います。

*1 R. Nanda, S. Samila, O. Sorenson (2020)
「The Persistent Effect of Initial Success: Evidence from Venture Capital」


編集:ファーストライト・キャピタル SaaS Research Team
2025.1.12

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