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【VIVA VC 第24回】シーズン1完結。改めて語る「なぜVCはやめられないのか」

2025.06.12

Podcast

【VIVA VC 第24回】シーズン1完結。改めて語る「なぜVCはやめられないのか」

はじめに

「なぜVCという仕事を続けるのか?」 ファンドレイズの度に「吐きそうになる」と言われるほどの苦労があり、投資先の有事対応に追われ、自己資金をファンドに投入するリスクを背負う。外から見ると、なぜそこまでして続けるのか不思議に思われるかもしれません。

今回は、ポッドキャスト「VIVA VC」シーズン1の最終回として、改めて「なぜVCはやめられないのか」を語ります。24回にわたる対話の中で見えてきた、この仕事の本質と魅力を振り返りました。

※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第24回をもとに作成しました。番組では、この記事の内容をさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

24回の対話で見えてきたもの [01:24-03:38]

半年間、24回にわたりお届けしてきた「VIVA VC」。番組開始当初、坪井さんから「VCの人がどんな服装をしているかすらわからない」と言われたことが印象的でした。それほどまでに、ベンチャーキャピタルという職業は「謎に包まれた存在」だったのです。

番組では、ファンドの仕組みから投資プロセス、起業家との関係性や業界動向まで、幅広くお話ししました。特に反響が大きかったのは、第1回で話した「GPがファンド総額の1%を自己投資する義務」。多くの方から「VCもリスクを取っているんですね」と声をいただき、私たちも投資の当事者であることを理解していただけたと感じています。

VCは「スタートアップの一部」である [09:01-09:46]

24回の対話を通して伝えたいのは、「VCもスタートアップの一部である」ということです。VCは外から「高みの見物」をしているように思われがちです。しかし実際には、起業家の方々と同じようにリスクを取り、日々ハードシングスに挑んでいます。

ファンドレイズでは、何も売り物がない状態から投資家を説得し、様々な苦労を乗り越えて資金を集める。その意味で、私たちVCも「”ベンチャーキャピタル”というビジネスを経営する起業家」なのです。

この二面性こそ、VCという仕事の特徴です。投資を受ける起業家の立場も、投資する立場も理解しているからこそ、より深い支援ができると考えています。

「学校の先生」としての役割 [09:55-10:20]

番組の中で繰り返しお話ししたのが、VCの仕事は「学校の先生」に似ているということです。

シードステージは小学生のようにアイデアが豊富で活発。アーリーステージでは中学生のように反抗期もあり、「もうわかってる」と言われることもあります。しかし、それも成長の証。ミドル、レイターと進むにつれ、方向性が明確になり、大学生・社会人のように成熟していきます。

私たちは、各ステージに合わせて適切な助言をし、スタートアップが自立・飛躍するための土台を整える役割です。時に厳しい言葉をかけることもありますが、最終的には起業家の成長を最も近くで見守る存在でありたいと思っています。

VC適性チェックリスト [15:52-18:51]

私が以前個人的に作った「VC適性チェックリスト」の一部をご紹介します。

  • 聞き上手である(もしくは聞いている風)
    起業家の話を真摯に聞く姿勢が重要。ただし、全てを受け止めすぎると自分が疲弊するため、適度な力の抜き差しも必要
  • 有事になぜかワクワクしてしまう
    投資先の有事は必ず訪れます。「また来た、大変だ」ではなく、「よし来い」という文化祭前日のような高揚感を楽しめること
  • 大きな組織よりも小さな組織が好き
    スタートアップの少数精鋭のチームで、お互いに背中を預け合って働くことに喜びを感じられること
  • 駆け引きは嫌いじゃない
    投資交渉では様々な駆け引きが発生しますが、これを許容できること
  • 部活でエースじゃなかったけど、後輩を教えるのが得意
    これはまさに「先生」的な要素で、起業家の伴走支援に必要

これらの特徴を持つ方は、VCという仕事に向いているかもしれません。

なぜVCを続けるのか:3つのやりがい [19:13-20:44]

なぜVCという大変な仕事を続けるのか。そこには3つのやりがいがあります。

1. 無数の事業アイデアとの出会い
日々、魅力的な事業アイデアに出会えることは大きな刺激です。自分では思いつかないような発想や、既存の常識を覆すようなビジネスモデル。そうした新しい可能性に触れ続けられることは、何物にも代えがたい経験です。
2. 仮説検証の醍醐味
デューデリジェンス(DD)の回でもお話ししましたが、自分が立てた仮説を検証できることも大きな魅力です。普通の生活では、自分の妄想や仮説が現実になるかどうかを確かめる機会はそう多くありません。しかしVCの仕事では、投資判断の根拠となった仮説が、その後の事業成長によって検証されていきます。
3. 起業家の成長に立ち会うこと
最も大きなやりがいは、起業家の方との濃密なコミュニケーションです。後に500人、1000人規模の会社を率いることになる経営者が、10人、20人の組織でどんな悩みを抱えていたのか。その最も多感な時期に立ち会えることは、他では味わえない貴重な体験です。

    産業を作ることこそが使命 [22:07-22:26]

    私が大切にしている考え方があります。

    「リターンを残すのは三流のVC、起業家を残すのは二流のVC、産業を残して初めて一流のVC」

    投資収益はもちろん重要です。しかし最終的な使命は、新しい産業を作ることだと信じています。私たちファーストライトは、「人口減少社会におけるイノベーション創出」をテーマに投資をしています。日本の人口減少という社会課題に着目し、世界に先駆けて解決するイノベーションを生み出すこと。それによって、世界市場の打席に立てるようなスタートアップを応援していくこと。これこそが、私がベンチャーキャピタルをやめられない最大の理由です。

    おわりに

    24回にわたるシーズン1では、VC業務について体系的に解説してきました。まだまだ話し足りないことはたくさんありますが、一旦この形での配信は区切りとなります。今後はテーマを変えてシーズン2を検討していますので、引き続きお楽しみください。

    最後に、24回にわたってお聴きいただいた皆さま、本当にありがとうございました。少しでもVCという仕事の魅力や実態が伝わっていれば、これ以上の喜びはありません。

    ※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第24回をもとに作成しました。番組では、この記事の内容をさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

    編集:ファーストライト・キャピタル SaaS Research Team
    2025.6.16

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