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【VIVA VC 第23回】VCの生命線、ファンドレイズ。2号・3号ファンドの壁を超えるには?

2025.06.07

Podcast

【VIVA VC 第23回】VCの生命線、ファンドレイズ。2号・3号ファンドの壁を超えるには?

はじめに

私たちVCにとって、ファンドレイズ(資金調達)は文字通り「生命線」です。どれだけ優秀な投資眼を持っていても、資金を集められなければ、VCとしての活動は成り立ちません。今回は、私自身の経験を交えながら、ファンドレイズの実態と「なぜ2号、3号ファンドの方が1号より難しいのか」という業界の常識についてお話しします。ファンドレイズの苦労ややりがい、そしてLPとの関係構築の重要性まで、具体的なエピソードを交えて解説します。ぜひ最後までお読みください。

※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第23回をもとに作成しました。番組では、ファンドレイズの苦労話をより詳しくお話ししています。ぜひお聴きください。

ファンドレイズの基本:売り物がない営業の難しさ [04:25-07:13]

ファンドレイズの基本的な仕組みは、投資事業有限責任組合というファンドを設立し、LPと呼ばれる投資家から資金を集めることです。LPは金融機関や事業会社などで、例えば100億円のファンドであれば、1口1億円などの単位で出資していただきます。

一方、私たちVCはGPとしてファンドを運用します。この営業の難しさは、売り物がないことにあります。私はLP候補者を訪問し、「今度ベンチャーキャピタルを立ち上げるので5億円出資してください」とお願いしても、提示できるのは私個人と投資コンセプトだけです。プロダクトやサービスがない中で、夢や希望を語り、共感を得る必要があります。

1号ファンドの苦労:夢と希望で勝負 [07:22-09:30]

1号ファンドの立ち上げは「夢と希望」だけが頼りです。トラックレコードがない状態では、自分のコンセプトや描く世界観を信じてもらうしかありません。これは、シードステージの起業家が事業プランだけで資金調達をするのと似ています。

ただし、1号ファンドにはアドバンテージもあります。新しい投資テーマやGPのユニークなバックグラウンドに期待してくれる投資家がいるのです。統計的にも、1号ファンドはパフォーマンスが出やすい傾向があります。ファンドサイズが小さいこと、そして新しいGPの高いモチベーションが理由です。

最近では、1号ファンドを支援するEMP(エマージングマネージャープログラム)も登場しています。これは、伸びていくGPやファンドマネージャーに投資する仕組みです。VC業界のシード投資家のような存在です。

2号、3号ファンドが最も苦しい理由 [14:15-15:09]

業界では「2号、3号ファンドが最も苦しい」と言われています。理由は明確で、日本のIPOまでの平均期間が10年以上かかる一方で、VCは4年周期で新しいファンドを作らなければならないからです。つまり、2号ファンド(設立から4年後)、3号ファンド(設立から8年後)の時点では、1号ファンドのIPOやM&Aの明確な結果がまだ出ていないのです。

2号、3号ファンドでの戦い方 [17:19-19:46]

実績がない中でどう戦うかは日々の課題です。LPからは「経済合理性を説明せよ」「競合VCとの違いを明確にせよ」と厳しく問われます。

私たちが2号ファンド100億円を立ち上げる際に重視したのは次の2点です。

1. 社会変革を示す大きなビッグピクチャーを描くこと
ファンドの投資を通して何が変わるのか、どういう社会変革を作っていくのかという大局的な視点を示す。
2. LPの経営アジェンダとの一致
私たちの場合、「人口減少社会におけるイノベーション創出」というテーマが、地域金融機関が抱える課題と完全に合致していました。

逆に、単に「AIに投資します」や「ロボティクスに投資します」といったテーマでは、大企業の中でもR&DやCVCの新規事業の一つのパーツとして捉えられがちで、経営の大きなアジェンダではない可能性があります。担当者が異動した際に投資継続の優先順位が下がるリスクがあります。

LPとの関係性:対等なパートナーシップ [22:59-25:14]

ファンドレイズでは、LPとの関係が上下関係になりがちですが、それでは持続的な関係を築けません。よくあるのは、LPがGPから情報を得るだけの関係になってしまうケースです。

大切なのは、GPとLPが対等なパートナーシップを築くことです。投資先の成長がLPにどうメリットをもたらすか、また私たちの活動にもLPの支援が必要だと明確に伝える必要があります。これは、スタートアップとの関係づくりと全く同じです。お互いの貢献があって初めて、持続的なパートナー関係が築けるのです。

ファンドレイズの喜び [25:30-26:36]

苦労の多いファンドレイズですが、喜びも確かにあります。自分たちの描いた社会変革のテーマに共感が集まり、実際の行動へとつながる瞬間は非常にやりがいを感じます。

例えば、私たちは現在、地域金融機関と「地域課題解決DXコンソーシアム」を組み、地域展開を目指すスタートアップと地域企業をつなぐ活動をしています。最初はアイデアだけだったものが、こうして具体的な形となる過程を見るのは、ファンドレイズの醍醐味です。

ただし、ファンドレイズの厳しさは、やはり吐きそうになるほど大変だというのが正直なところです。この苦労に共感してくれるGPの方々も多いはずです。

おわりに

今回のお話を通じて、VCもスタートアップと同じく、資金調達を行い、投資家の期待を背負っていることをお伝えできたのではないでしょうか。「人のお金で、人のふんどしでビジネスをしている」と見られがちですが、実際には大きなプレッシャーと責任を抱えています。

思い出すだけで胸が詰まるほど苦しかったファンドレイズ。それでも私たちがこの仕事を続けるのは、産業を作るという大きな使命があるからです。次回はいよいよ「VIVA VC」の最終回。これまでのシーズン1を総括しながら、VCという仕事の本質をお話しする予定です。どうぞお楽しみに!

※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第23回をもとに作成しました。番組では、ファンドレイズの苦労話をより詳しくお話ししています。ぜひお聴きください。

編集:ファーストライト・キャピタル SaaS Research Team
2025.6.8

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