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【VIVA VC 第21回】事業成長の壁に直面。投資先が苦しんでいるときの、VCの動き方

2025.05.23

Podcast

【VIVA VC 第21回】事業成長の壁に直面。投資先が苦しんでいるときの、VCの動き方

はじめに

ベンチャーキャピタル(VC)にとって、投資先の成功は最大の使命です。しかし、すべての企業が順調に成長するわけではありません。むしろ、成長の壁に直面し、苦戦を強いられるケースも少なくありません。そのときVCは、どのように起業家と向き合い、何ができるのでしょうか。今回は、事業が停滞したときにVCが果たすべき役割や、支援のあり方について、私の経験を交えながらお話しします。

※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」第21回をもとに作成しました。番組では、投資先が困難に直面した際のVCの役割について、より詳しく議論しています。ぜひお聴きください。

最悪の事態が訪れたとき [05:55-07:37]

投資先が最終的に事業継続を断念せざるを得ない場合、VCとしても判断が迫られます。ファンドは通常10年という期間があるため、期間内に投資先の株式を現金化する必要があります。そのため、セカンダリーで株式を他者に売却したり、最悪の場合には起業家が株を1株1円で買い取って会社を清算するケースもあります。

とはいえ、資金繰りが完全に破綻する前に、方向転換することも選択肢となります。たとえば、IPOを目指すチャレンジから自力経営へシフトし、規模を抑えて事業を継続する道もあります。

成長が停滞するパターン:3つの主な要因 [09:27-12:16]

投資先企業が成長の壁に直面するパターンは、大きく分けて3つあります。

  1. 市場環境の変化

企業側の努力ではどうにもならない要因のひとつが、市場環境の急変です。たとえば、コロナ禍によって観光・飲食・宿泊業が打撃を受けたように、外的要因によって大きな影響を受けることがあります。また、米国の関税政策変更により、製造業や自動車業界も大きな影響を受けています。このような変化は予測が難しく、回避することが困難です。

  1. プロダクトと市場のミスマッチ

ユーザーニーズがある市場に対し、適切なプロダクトを提供できていない場合です。典型的なのは「nice to have(あれば便利)」なサービスで満足してしまい、「must have(なければ困る)」になりきれていないケースです。また、外注開発によってアジャイル対応ができず、ユーザーの声にスピーディーに反応できないことも、ミスマッチを引き起こします。

  1. 成長スピードの遅さ

描いた成長曲線に対し、実際の進捗が著しく遅れている場合です。市場のニーズが変わる中で対応が遅れ、波に乗り損ねてしまいます。その背景には、方向性がぶれる、事業計画が曖昧になる、営業がうまく進まない、人材の採用に失敗する、といった要因が複雑に絡み合っています。

挽回の可能性を左右する決定的要素:コミュニケーション [14:48-16:47]

投資先企業が苦戦しているとき、再浮上の鍵となるのは「起業家とVCとのコミュニケーションの量と質」です。特に信頼関係の構築が不可欠です。バッドニュースを正直に共有できる関係があれば、事業の軌道修正に向けた提案や判断が可能になります。

一方で、コミュニケーションが断絶され、重要な判断を起業家が孤独に下すようになると、状況はさらに悪化します。だからこそ、VC側も日常的な接点を持ち、信頼関係を築いておくことが重要です。営業トークの相談や採用面接への同席といった些細な関わりが、信頼を育む礎となります。

米VCベンチマークが示す理想的な関係性 [17:35-18:24]

米国の著名なVC、ベンチマークのパートナーが語った言葉が印象的です。「日々のキャピタリストの信頼の積み重ねをして、起業家が本当に困ったときや大切な決断をするときに頼られる存在になれるか。すなわち、社外の共同創業者のような存在になれるかということだ」

VCが単なる出資者でなく、共に考え抜くパートナーであるためには、日頃の信頼構築が不可欠です。この姿勢こそが、企業の命運を左右する要素になると私も実感しています。

うまくいかない可能性が高いパターン [19:17-24:04]

ファーストライト・キャピタルでは、これまでの経験から「うまくいかない可能性が高いパターン」では、以下のような共通している点がありました。

  • 誠実性が欠けている
  • 経営チームを組成できていない
  • ユーザーペインを本質的に理解していない
  • 予算達成の強度が弱い
  • コスト感度が低い
  • 周囲を明るくできない
  • 成長スピードへの意識が薄い
  • 目的をイグジットに置いている
  • メディア露出が目的化している

たとえば「コスト感度」について、1円単位の支出にまで注意を払う経営者ほど、必要な場面では大胆な投資ができるという矛盾した力強さを持っています。お金の価値に対する感覚が明確であるため、判断基準が明確なのです。

また「メディア露出が目的化している」ケースでは、露出の意義が明確でないため、経営の本質が見失われる危険性があります。採用や顧客開拓などの目的とつながっていない露出は、VCとしては、むしろ経営への関心が低下しているのではと違和感を覚えます。

苦境を乗り越えるために [28:00-29:33]

苦境を乗り越えるためには、「コントロール可能な要因」と「コントロール不可能な要因」とを見極める力が必要です。市場環境など避けがたい要因に直面したときでも、起業家との信頼関係や日常的なコミュニケーションが功を奏する場面は多くあります。

「ノーサイドまで絶対諦めない」という姿勢を持ち続けつつ、最終的に事業を継続できない場合でも、納得のいく着地をともに模索する。それがVCとしての責任であり、役割でもあります。

起業家とVCが、苦しい時期にこそ真の信頼関係を築き、共に次の一手を考え抜くこと。これが、長期的に見たときに投資先の成功確率を高める要因になると私は信じています。

おわりに

スタートアップの成長は、決して一直線ではありません。波があり、時には大きな壁にぶつかることもあります。そんなとき、VCがどれだけ寄り添い、信頼関係を築けているかが、再起のカギを握ります。

投資先の「成功確率を少しでも上げること」が私たちVCの使命です。そして、最も苦しいタイミングでこそ、VCの真価が問われます。これからも、起業家と真の信頼関係を築き、共に困難に立ち向かっていきたいと思います。

※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第21回をもとに作成しました。番組では、投資先が困難に直面した際のVCの役割について、より詳しく議論しています。ぜひお聴きください。

編集:ファーストライト・キャピタル SaaS Research Team
2025.5.26

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