一覧に戻る

【VIVA VC 第16回】投資後、VCは起業家にどんな支援をしている?具体的な方法のあれこれ

2025.04.12

Podcast

【VIVA VC 第16回】投資後、VCは起業家にどんな支援をしている?具体的な方法のあれこれ

はじめに

VCの投資後の支援の実態は表に出にくく、分かりづらいものです。支援の内容はVCごとに異なるだけでなく、企業の成長ステージによっても大きく変わります。今回は、ファーストライトでの実例をもとに、VCが行っている支援の中身を、シード・アーリーステージとミドル・レイターステージに分けて紹介します。

※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第16回をもとに作成しました。番組では、スタートアップ支援の実態についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

シード・アーリーステージの支援:企業の基盤づくりをサポート [01:43-06:05]

スタートアップ初期におけるVC支援は、会社の土台を固めるための伴走です。ファーストライトでは起業家と頻繁に面談を行い、継続的な対話を重ねています。

1. メンタリングとコーチング:起業家との本音の対話

定期面談は事業進捗の報告だけでなく、創業者が抱える不安や課題を率直に共有する場でもあります。スタートアップの創業者は孤独な戦いを強いられがちです。資金調達やチームビルディング、経営判断といった悩みに対して、VCが客観的な立場からアドバイスを行うことが求められます。もちろん、個人的な相談など、プライベートな話題も含めた人間関係の構築も大切にしています。このような信頼関係があるからこそ、厳しい局面での本音の対話が可能になるのです。

2. 事業計画へのアドバイス:データに基づいた伴走

特にシード・アーリーステージでは、「Go to Market戦略」(市場参入戦略)が重要です。ファーストライトではSaaS企業のデータベースを活用し、成長の指標を提示します。例えば、「1年以内に月次売上1,000万円を目指す」といった具体的なKPIを示し、その達成に向けた計画策定や戦略立案を支援しています。

3. 採用支援:最終面接や入社の後押し

優秀な人材の採用もスタートアップ成長の要です。VCが最終面接や内定後のフォローに関与することで、第三者としての立場から企業の将来性を伝え、入社を後押ししています。VCは「このスタートアップがどれだけ成功する可能性があるか」を客観的に語れるため、入社を迷っている優秀な人材に対しては重要なアプローチになります。

4. ネットワークの活用:事業を加速する人脈提供

マーケティング専門家や潜在顧客とのマッチング、出資者(LP)である地銀と連携して、地域展開を支援する「地域課題解決DXコンソーシアム」の立ち上げ、先輩起業家との対話機会を提供するコミュニティ「Thinka+」など、多様なネットワークを活用した支援を行っています。

地域課題解決DXコンソーシアム

※地銀9行と行った地域課題解決DXコンソーシアム(2024/7/3)

5. 実務的サポート:現場に入り込む支援

営業トークのブラッシュアップやピッチ資料の改善など、実務レベルでの支援もあります。営業通話の録音を聞いて一緒に改善点を探るなど、現場感のある支援が行われています。

ミドル・レイターステージの支援:IPOを見据えた準備 [07:21-08:40]

企業の事業基盤が整い始めると、VCの支援内容も変わってきます。ミドル・レイターステージでは、さらなる成長加速やIPO準備が中心テーマとなります。

1. 資金調達の支援:株式と融資の最適バランス

次のラウンドに向けた資金調達では、投資家の紹介や調達活動のサポートなどを行います。例えば、近年注目されている「ベンチャーデット」(スタートアップ向け融資)の活用支援を行っていますが、銀行との交渉や融資のための資料準備など、VCが伴走することで、より柔軟な資金戦略を構築できます。

2. IPO準備の伴走:投資家目線の資料作成

IPOに向けては「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」の作成が重要です。これは上場後の投資家に対して、会社の成長可能性をアピールするための重要な資料です。私は証券アナリスト出身というバックグラウンドを活かし、上場後の投資家の視点を取り入れた資料作りをサポートしています。

オルツ「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」

※ファーストライト投資先のオルツの「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」

支援の難しさ:VCと起業家の目線の違い [11:13-11:56]

起業家との間で意見がぶつかることもあります。特に成長スピードや目標設定において、VCは高い目標を求めがちですが、起業家はより慎重なアプローチを取ることがあります。このような目線の違いが、時に対立の原因になります。

支援のあり方について学んだこと:主役は起業家 [16:05-17:50]

失敗経験から学んだことの一つは、「自分の成功体験を押し付けない」ということです。私のかつての上司が「主役は起業家。求められたときに応えられる準備をするのがVCの役目。自分が今アーリーステージの起業家だと、『よくわからないけど挑戦する勇気が湧いてくる』そんなVCに入ってもらいたい」という言葉がきっかけでした。

自分の成功体験を押し付けるのではなく、主役である起業家が自ら気づき、前に進むための後押しをする「見守る支援」へとスタイルを転換。その結果、起業家から学ぶことも増え、自らも成長できる実感を得るようになったといいます。

おわりに

VCの支援は資金提供だけでなく、「人としてどのように関わるか」が非常に重要です。どんな専門性や支援メニューを持っているかはもちろん大切ですが、限られた時間の中で、起業家の可能性を最大限に引き出す伴走ができるかどうかが、VCの価値を左右します。

VCと起業家は対等なパートナーです。互いに信頼関係を築くことで、困難な状況でも前進できると信じています。今後も起業家との信頼関係を大切にしながら、日本発のイノベーション創出に貢献していきたいと考えています。

※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第16回をもとに作成しました。番組では、スタートアップ支援の実態についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。歩み、変化の瞬間に立ち会う——それが、VCという仕事の何よりの醍醐味です。

編集:ファーストライト・キャピタル SaaS Research Team
2025.4.14

Top Insights Podcast 【VIVA VC 第16回】投資後、VCは起業家にどんな支援をしている?具体的な方法のあれこれ

Newsletter

ファーストライトから最新のニュース・トレンドをお届けします。