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【VIVA VC 第15回】 投資をしてからが本番。VCが起業家に行う「6タイプの成長支援」

2025.04.05

Podcast

【VIVA VC 第15回】 投資をしてからが本番。VCが起業家に行う「6タイプの成長支援」

はじめに

デューデリジェンス、交渉、契約締結——こうした一連のプロセスを経て投資が実行されます。しかし、VCの本当の仕事はここから始まります。VCは起業家の伴走者として、長期的な成長支援に取り組んでいくのです。今回は、投資実行後にVCがどのようにスタートアップと関わり、成長をサポートしているのかについて、具体的なスタイルや支援の種類を掘り下げて解説します。

※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第15回をもとに作成しました。番組では、VCの成長支援についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

VCの支援スタイル[02:09-03:57]

VCのスタートアップへの関わり方には、大きく分けて3つのスタイルがあります。

  • ハンズオン:積極的に投資先の成長支援に関与する
  • ハンズオフ:成長支援には関与しない
  • ハンズイフ:必要に応じて支援を行う

実は、「ハンズオン」という言葉に対して、起業家の中には抵抗感を抱く人もいます。まるでVCが主導して会社を動かしているかのような印象を与えるためです。実際、主役はあくまでも起業家であり、VCはその裏側で支援する立場です。私も、その考えから「ハンズオン」という表現は極力避けるようにしています。

VCごとに関わり方は異なりますが、ファーストライトは積極的に投資先の支援を行うスタイルを取っています。

キャピタリストの6つのタイプ[04:28-06:55]

投資後の支援は、担当キャピタリストの経験や特性により大きく異なります。私の経験では、キャピタリストは以下の6タイプに分類できます。

  1. モチベーター型:起業家の士気を高めるのが得意
  2. 事業経験型:自身のIPO経験や事業・経営経験をもとに助言
  3. 海外情報型:海外経験やリサーチから得た海外の成功事例を共有
  4. VC経験型:長年のVC経験から得た人脈や成功パターンを提供
  5. ファイナンス・コンサル経験型:投資銀行やコンサル経験を活かし、事業計画や財務戦略の策定をサポート
  6. スペシャリスト型:専門職(例:会計士、弁護士等)としての知見を活かしてサポート

私は「事業経験型」であり、ユーザベースでの事業開発や海外展開の知見をもとに支援しています。

ただし、成長支援には様々な難しさがあります。自分が過去に経験した失敗を伝えたり、「このままいくと失敗するよ」と言っても、実際に経験しないと分からないからです。言いすぎれば「なんだこのVCは」と思われる可能性もあり、適切な距離感を保つのは難しいです。

起業家にとっては、自分に関わるキャピタリストがどのタイプなのかを把握し、その強みを活かすようにすると、より有益な関係を築けるでしょう。

チームとしての支援体制づくり[08:49-11:52]

近年では、VCが組織として成長支援体制を整える動きが増えています。以下はその一例です。

  • 採用支援チーム:リクルーターがVCに在籍し、投資先の経営陣候補を紹介
  • アライアンス支援:LPである事業会社や金融機関との連携をサポート
  • CVC*1 での支援:親会社(事業会社)とのシナジー創出を担う専門チーム

こうした支援体制は、スタートアップにとって大きな価値になり得ますが、同時に期待と現実のギャップも生まれがちです。たとえば、アメリカのある調査では、92%のVCが「価値ある支援をしている」と考える一方で、61%の起業家は「期待値を下回っている」と感じているという結果があります。

このギャップの背景には、他VCとの差別化という点でのLPへのアピールや管理報酬の制約による専門家の数の限界など、VC側の事情もあります。だからこそVCは、本当に起業家が必要としている支援とは何かを、あらためて問い直すことが求められています。

*1 CVC:事業会社が戦略的目的で設立するコーポレートベンチャーキャピタル(Corporate Venture Capital)のこと

ファーストライトの支援スタイル[13:17-14:40]

ファーストライトでは、主に2つのアプローチで投資先を支援しています。

  1. SaaSデータ分析に基づく実践支援:複数のSaaS企業の定量データを分析し、「この成長スピードならどの水準に到達可能か」といった観点から、実行可能な事業計画の構築をサポート。
  2. コーチング:特にリード投資を行った企業に対しては、起業家と1対1の面談を定期的に実施。ビジョンの明確化や課題の整理、突破の糸口を一緒に探ることで、事業と人の両面から伴走。

これらの支援は、起業家との長期的な関係性の中で行われます。成功するIPOやM&Aの裏側には、こうした信頼に基づく伴走支援の積み重ねがあるのです。

おわりに

VCと起業家の間には、成長支援に対する期待値のギャップが存在します。この現実を受け止めつつも、VCという仕事の魅力は、起業家とともに成長の瞬間に立ち会えることにあります。

VCはあくまで裏方であり、事業の主役は起業家です。重要なのは、起業家が助けを必要としたときに、いかに適切に寄り添えるかという点です。

もちろん、支援には限界があります。しかし、起業家が悩み苦しんでいるときにそばにいて、少しでも勇気づけることができる——それこそがVCの本質的な役割です。

長い投資期間を通して起業家とともに歩み、変化の瞬間に立ち会う——それが、VCという仕事の何よりの醍醐味です。

編集:ファーストライト・キャピタル SaaS Research Team
2025.4.7

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