
はじめに
産業革命は、技術革新によって社会や経済の構造が大きく変化する歴史的な転換点です。現在、AIの進化が「第四次産業革命」として注目されており、過去の産業革命のパターンを振り返ることで、その未来を予測するヒントが見えてきます。
今回は、AIエージェントと生成AIの違いを明確にし、産業革命の歴史を振り返りながら、AIがもたらす変革の可能性について考察します。
※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第12回をもとに作成しました。番組では、産業革命の歴史とAI時代の産業の未来についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。
AIエージェントと生成AIの違い [02:42-04:05]
まず、最近話題になっている「AIエージェント」について触れておきたいと思います。生成AI(ChatGPTなど)と混同されることもありますが、これらは実は異なるものです。
生成AIは、ユーザーが指示したことに対して回答や解決策を提供するのに対し、AIエージェントはより自律的です。自分がやりたいことを指示するだけで、AIが別のAIやソフトウェアを使って考え、作業し、アウトプットを提供してくれます。言わば「自分のクローン」のような存在と言えるでしょう。
このAIエージェントの登場は、単なる技術進化ではなく、「第四次産業革命」と呼ぶべき大きな変革をもたらしつつあります。では、過去の産業革命から何を学べるのでしょうか。
産業革命の歴史から見るパターン [04:28-10:13]
第一次産業革命
蒸気機関の発明によって手作業から機械生産へと移行し、鉄道の発展や印刷技術の向上により、「物」と「思想」の民主化が進みました。これにより、製品や知識がより広範に行き渡るようになりました。
第二次産業革命
電気と内燃機関の発展により、「移動」と「労働」が民主化。自動車の登場で移動が容易になり、大規模工場での生産方式が確立され働き方が変わりました。
第三次産業革命
インターネットの普及により、「情報」と「起業」の民主化が進みました。どこからでも情報にアクセスできるようになり、低コストで事業を立ち上げられる環境が整いました。
第四次産業革命
AIの進化により、「知識」と「時間」が民主化されつつあります。今までは経験や学習に多くの時間を要した専門知識が、AIによって誰でも簡単にアクセスできるようになります。また、AIエージェントが自分の分身として働くことで、従来は一人でシングルタスクしかできなかったものが、複数の作業を同時並行で行えるようになり、「時間」も民主化されるのです。
産業革命後に起こる共通のパターン [11:00-12:53]
- 過剰投資
新技術への期待から過剰投資が発生し、バブルが形成されました。過去の鉄道やインターネット企業と同様、現在のAI分野にも類似の兆候が見られます。歴史のパターンからすると、「AIバブル」が崩壊する可能性も考慮しておくべきでしょう。
- 過剰供給
新技術の普及による大量生産で価格が下落し、激しい価格競争が発生。AI時代にはソフトウェア市場でも同様の現象が予想されます。特に「業務効率化」だけを目的としたSaaSは、価格競争に陥りやすくなるでしょう。
- 労働環境の変化
技術革新に伴い従来の仕事が消える一方で、新たな職種が誕生します。AI時代には特にエンジニアの働き方が変わり、プロンプトベースのプログラミングが普及することで技術的な障壁が下がると考えられます。
VC視点で見るAIの未来投資 [16:08-17:22]
VC視点で見ると、AIによる産業革命はどの業界から進んでいくのでしょうか。歴史を紐解くと、産業革命は第一次産業革命なら繊維工業、第二次産業革命なら自動車産業というように、通常ある特定の業界から始まることがわかります。
AIによる産業変革は、テキストや音声データを大量に扱う業界(コールセンター、営業、法務など)から始まると予測されます。これらの領域は特に業務効率化の余地が大きく、AI導入のインパクトも顕著です。
注目のAIスタートアップ [17:18-19:25]
「Decagon」は、従来のチャットボットを超えたAIカスタマーサポートを提供し、「11X」は営業活動を完全に代行するAIエージェント(アリスとマイク)を開発しています。これらのAIは、人間と遜色のない自然な対応が可能であり、業界に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

日本のスタートアップにもチャンスはあるか [20:30-22:03]
AI技術のインフラ開発では海外企業がリードしていますが、日本企業にはユーザーニーズに適したアプリケーション開発のチャンスがあります。特に人口減少という日本特有の課題に対応するAIソリューションには、大きな可能性があります。
人間の役割は何か [23:09-24:47]
AI時代において、人間の役割は「目的を定義すること」です。AIは無限の忍耐を持つ新入社員のようなものであり、適切な指示を与え、導くことが重要です。どのようにAIを活用し、社会に貢献させるかを考えるのは、依然として人間の責務なのです。
おわりに
産業革命の歴史を振り返ることで、AIがもたらす変化の本質が見えてきます。過去の革命と同様に、新技術の普及には投資バブルや労働環境の変化が伴いますが、それを乗り越えた先には新たな成長が待っています。
AIをどのように活用し、社会の発展に貢献するか——それを考え、実践するのは私たち次第です。
※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第12回をもとに作成しました。番組では、産業革命の歴史とAI時代の産業の未来についてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。
編集:ファーストライト・キャピタル SaaS Research Team
2025.3.17
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