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【VIVA VC 第10回】「人」は投資先選定の超重要事項。どんな起業家に投資したくなるのか

2025.03.01

Podcast

【VIVA VC 第10回】「人」は投資先選定の超重要事項。どんな起業家に投資したくなるのか

はじめに

「起業は人が9割」とよく言われます。

VCが投資を検討する際、事業の評価と並んで重要なのが「起業家とそのチームの見極め」です。しかし、この「人を見る」という行為は非常に難しく、明確な言語化が困難な部分も多く存在します。

今回は、投資判断における「人」の重要性を掘り下げ、起業家の見極めの視点について詳しく解説していきます。

※この記事はポッドキャスト「VIVA VC」第10回を元に作成しました。番組では、起業家の見極めについてさらに詳しく語っています。

投資判断における「人」の重要性

VCの世界では「起業は人が9割」という言葉が頻繁に使われます。これは単なる格言ではなく、実際の投資判断における重要な視点です。

私たちは、この「人」の要素を可能な限り言語化し、チーム内で共有できる判断基準として整理しています。その結果として導き出された6つの重要な見極めポイントを紹介します。

1. チームビルディング力 [04:30-05:30]

最も重視するのが、チームビルディング力です。

チームビルディング力:
・お互いの弱みを見せ合える関係性の構築
・オープンなコミュニケーションの文化醸成
・多様性を受け入れ、活かせるチーム作り

お互いに弱みを見せあって、それを補完しあえる仲間と経営ができているかがポイントです。一方で、「綺麗ごとしか言わないチーム」は要注意です。本音で語り合える環境があってこそ、真の意味でのチーム経営が可能になります。

2. 原体験の有無 [05:35-06:30]

事業を立ち上げるきっかけとなった「生々しい経験」の存在は、非常に重要な要素です。

原体験があることのメリット:
・ユーザーの課題に対する高い解像度が持てる
・業界からの共感を得やすくなる
・ハードシングスにぶつかっても折れない信念を持てる

強い原体験があることで、自分の言葉で課題について語ることができ、立ち上げ時のスピードの速さにも繋がっていきます。

3. 数字への強度[06:41-08:35]

事業を成功に導くためには、数字に対する強いコミットメントが不可欠です。

数字への強度:
・目標達成に対する強いこだわり
・細部にまで行き届いたコスト意識

コスト意識の例だと、創業期のユーザベースでは、キャラクターのボールペンを会社費用で購入することについても全社員で議論するほどでした。

4. 成長へのスピード [08:42-10:00]

良い意味での「せっかちさ」は、スタートアップの成長には必要不可欠です。

成長へのスピード:
・変化がないことへの強い焦燥感
・高い成長意欲
・スピーディーな意思決定

事業が変化していないと不安になってしまうぐらい「せっかち」な方のほうが、立ち上げスピードが速くなることが多いです。この点に関して、ファーストライトは前回の資金調達から今まで何をやってきたのかを聞くようにしています。

5. 明るさ・チャーミングさ[10:15-12:10]

GE(ゼネラル・エレクトリック)の元CEOであるジャック・ウェルチは、経営者の条件として「4E」を掲げました。

4E:
・Energy(自らの活力)
・Energize(周囲を活性化する力)
・Edge(決断力)
・Execute(実行力)

よく見ると、4つのうち2つが元気に関することです。スタートアップ経営において、経営者が明るくいることで、困難に直面してもチームとして前向きでいられることや周りを元気にさせることが出来ます。

6. 張ってる感 [12:16-13:04]

最後に挙げるのが「張ってる感」。これは、責任感と主体性が表れた状態を指します。

張ってる感:
・後ろに誰もいないという覚悟
・他責にせず、自分で立ち向かう姿勢
・「自分がやらなければ」という使命感

例えるなら文化祭実行委員のように、どんなトラブルが起こっても人のせいにせず、逃げずに自分が立ち向かっていくような感覚です。

投資判断前後の危険信号 [14:55-18:15]

一方で、投資検討の過程や投資後で、以下のような兆候が見られた場合は注意する必要があると考えています。

1. 月次目標の消失

月次報告において、実績値だけが報告され、資料から目標値が示されなくなるケースです。これは自信が無くなっているのが原因なことが多く、「数字への強度」の欠如を示す可能性があります。

2. 頻繁なターゲット変更

想定通りに顧客開拓が進まず、「顧客ターゲットが間違っていた」と顧客ターゲットを短期間で何度も変え続けるケースは、自社のプロダクトを何としてでも売り込むという「張ってる感」が弱くなっている可能性があります。

3. 体裁にこだわりすぎるプレゼンテーションと綺麗すぎる説明

報告資料のフォントやデザインにこだわり、バッドニュースが一つもなく綺麗な説明に終始する場合は、背後にバッドニュースが隠れていると、警戒すべきポイントです。

おわりに

起業家の見極めは、VCにとって最も重要かつ難しい仕事の一つです。しかし、それは単なる評価プロセスではなく、起業家との深い相互理解を築く機会です。

私たちが目指すのは、起業家を人として深く理解し、共に成長していける関係性の構築です。そのためにも、これらの見極めポイントを常に進化させ、より良い投資判断につなげていきたいと考えています。

※この記事は、ポッドキャスト「VIVA VC」第10回をもとに作成しました。番組では、投資判断における起業家の見極めについてさらに詳しく語っています。ぜひお聴きください。

編集:ファーストライト・キャピタル SaaS Research Team
2025.3.03

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