ファーストライトでは、2022年10月、新たなビジョン「事業家による起業家のための100年VC」を策定しました。“世界の新産業を創造する「起業家と事業」の成長プロセスを、「リアルな事業経験」を基にリードし続ける「ベンチャーキャピタリストチーム」として、次のステージに挑戦。アジアから世界を狙える世界進出も、積極的に支援していきます。このビジョンにこめた思いを、ファーストライト・キャピタル代表取締役マネージング・パートナーの岩澤脩と、マネージング・パートナー頼嘉満が語ります。
個がメインの立ち上げ期から、チームで未来を描く第2フェーズへ
──今回、ファーストライトでは「事業家による起業家のための100年VC」というビジョンを新たにつくりました。以前の「SaaS・サブスクリプションビジネス特化型VC」から刷新することにしたのか、その理由を教えていただけますか?
岩澤 ファーストライトは2018年に設立し、もうすぐ5年目を迎えます。創業第1期の立ち上げ期が終わり、第2期のフェーズに入ったのが、ビジョンを刷新し、HPをリニューアルした直接的な理由です。
第1期は代表であり唯一のパートナーである僕個人が、1人で走ってきたという側面が強かった。それが、2021年に頼さんがジョインし、さらにメンバーも増えたことで、僕個人ではなく「チーム」として未来を創る方向に大きく舵を切るようになりました。
頼 岩澤さんとは、ファーストライトの目指す方向についてファーストライトにジョインする前から議論を重ねてきました。その中で大事にしたいキーワードがいくつかあがってきました。「アジア」や「多様性」もそれらのひとつです。アジアから世界を目指し、チームにも投資先にも多様性を感じられるVCを一緒に体現したいと思ってファーストライトにジョインしました。しかし、以前のHPでは全く表現できていなかった。そこをきちんと前面に押し出していくべきだと思ったのも大きかったです。
岩澤 これまでファーストライトはSaaS特化型として成長してきました。しかし、これからはSaaSに加えて投資領域を拡大していきます。アジア展開を目指したり、多様性を重視するスタートアップの支援も積極的に行っていくつもりです。そういう新しいファーストライトとしてのビジョンが、「事業家による起業家のための100年VC」です。
頼 ビジョンを策定するために、チームで徹底的に議論しました。マネジメントがビジョンを決定するのではなく、メンバー全員が目指す方向を理解して、チームがワクワクできる未来をテーマに、全員が考えた言葉をマッピングしました。表現は違っても、結果的に、メンバー全員が目指す方向性はわりと共通するものが多かったですね。
岩澤 起業家にとって、どんな存在でありたいかを徹底的に考えました。我々はあくまでも伴走者であり、主役は起業家です。「伴走」というと単に横を歩いていると思いがちですが、そうではなく事業経験を基に少し先の立ち位置でリードし、成長に寄り添う存在でありたいのです。
頼 起業家とVCの関係でよく「ハンズオン支援」という言葉が使われますが、私たちがやっているのは「ハンズオン」ではないと思っています。「ハンズオン支援」という言葉は、主語がVCになりがちだからです。事業の成長で、最終的に称賛されるべきなのは、VCではなく起業家であるべき。主役は起業家だということにはこだわりを持っています。
岩澤 そんな議論を通じて、ビジョンには副文も添えました。
【副文】
ファーストライトは世界の新産業を創造する「起業家と事業」の成長プロセスを、
「リアルな事業経験」を基にリードし続けるベンチャーキャピタリストチームです。
私たちがリードするのは、「成長」ではなく、「成長プロセス」。なぜなら、成長そのものの主体は起業家であるべきだからです。あくまでも成長の「プロセス」を、私たちが持つ「リアルな事業経験」を基にリードするところにイニシアチブを取るのです。
頼 加えて、起業家自身の成長プロセスもサポートしたいと思っています。「成長」というと、一般的なイメージは「事業の成長」でしょう。ファーストライトとして伝えたいのは、事業、起業家の両方の成長が必要であり、そのどちらの成長プロセスもリードしていきたいのです。
岩澤 事業や組織をスケールさせる過程で、経営者の本質的な人間としての成長がないと、投資先の事業の成長にはつながっていきません。キャピタリストとして、最終的にはそこまで踏み込んでサポートしていかないと、本当に起業家のためにはなれない。その起業家が持つポテンシャルを最大限引き出す役割を我々は担っているのです。
新産業の創出をサポートするための「100年VC」
岩澤 新産業を創造していきたいという思いも、明確にあります。ただ、新産業の創造には長い年月がかかります。それに伴走して貢献していくには、我々自身が100年続くようなVCであり続けなくてはなりません。
そのためには、再現性のある投資判断・成長支援をすることで、次世代のファーストライトメンバーにノウハウを伝承していくしかありません。だからこそ、個よりチームとしてのVCであることが求められます。
一般的に、投資判断というのは属人化しやすく、パートナー個人のナレッジやノウハウに依存するケースが多いものです。しかし、ファーストライトが目指すのはその逆。とことん説明したり、立場によらないオープンな議論を徹底することで、個人ではなくチームとしての力を発揮していきたい。それが必ず100年というスパンにつながっていくはずです。
頼 そこに新しい産業が生まれるなんて、誰も信じていない領域に対して、ファーストライトが100年というロングスパンでベットする。その結果、新たな産業が生まれるとしたら、すごくエキサイティングだと思っています。
今はまだホットトピックでなくとも、将来を見据えた我々の確かなリサーチ力で、新たな産業の種となるポテンシャルを見つけて、育てていく。100年という時間で、必ずそれを実現していきたいのです。
岩澤 新しい産業というのは、頼も言うように「種」なんです。まずは種をまくところから始める必要があります。パートナーだけの感覚で判断するのではなく、チームとして徹底的に議論し、ポテンシャルがあるかどうかのロードマップ・リサーチをすることで、理論の裏付けができるのです。
ポテンシャルを見極めて種をまき、実になるまで伴走するとしたら、相当な時間がかかる。だからこそ、100年先まで存続するVCになるという決意を表明しています。
──「個ではなく、チームで」であることが重要なのですね。
岩澤 副文の最後にも我々は「ベンチャーキャピタリストチームです」とはっきり明言しています。ベンチャーキャピタリストは、あくまでも「個」ですが、その「個」が「群」になることで、より強いチームになれます。わかりやすくいうと、同じビジョンを持つ個が集まった「プロ集団」というイメージですね。
「ベンチャーキャピタルです」という言い方には、その会社としてのシェルが見えてきます。しかし、「ベンチャーキャピタリストチーム」は、一人一人のベンチャーキャピタリストが個として立ちながら、同じ価値観を共有したチームが一丸となってサポートしていくというのが明確になると思います。
アジア、そして世界を目指すスタートアップを支援
岩澤 ファーストライトのメンバーの経歴は、全員、海外での事業経験があり、海外進出を目指すスタートアップを支援するに十分なキャリアを兼ね備えています。本気でユニコーン、デカコーンを目指すなら市場に上限がある日本を飛び出して、海外進出するのは不可欠。1社でも多く、「海外にチャレンジする」という打席に立ってもらうことが何よりも大事です。
シード〜アーリーステージから、海外を意識したプロダクトやチームづくりを支援する。それが、僕らファーストライトにとっての中長期的な存在意義、アイデンティティになっていくはずです。
頼 個人的な感覚として、「アメリカがテックイノベーションをリードしており、その領域で、アジアから生まれるイノベーションは多くない」というジンクスに対して、「そんなことはないんじゃない?」「誰がそんなことを決めたの?」という素直な思いもあります(笑)。アジア人のひとりとして、世界で戦えるスタートアップをアジアから生み出したいですね。それによって、アジア地域の向上につなげていきたいです。
岩澤 最終的に一番大事なのは、「どの高さを目指すのか」という起業家のWillです。創業期は海外進出を目指していても、ステージが変わる中であきらめてしまう起業家も多くいます。僕らとしては、そういう起業家のWillをVCが邪魔をしてはいけないと思っています。
頼 海外に出たいけれど、VCから「やめたほうがいい」と言われてあきらめる人たちもいれば、「海外とは何ぞや」を、知らない人もまだまだ多いですね。勝負できるか、できないかを知らないから、考えたこともないというケースです。
その両方のケースの起業家に対して、我々は豊富な海外経験と、目利きできる十分な情報を基にしたアドバイスが可能です。VCが提供する情報というとアメリカに偏りがちですが、我々はアジア全域にも精通しているのが強み。
そういうさまざまな情報やアドバイスによって、起業家の視野も広がり、多様な意思決定ができるようになります。海外に進出する前はもちろん、海外進出後のサポートも十分に行うのも、大きなメリットになるはずです。
100年続くVCとなるべく、強い決意で挑む
──お話をうかがう中で、「事業家による起業家のための100年VC」というビジョンに込められた、ファーストライトのさまざまな想いやこだわりの強さが伝わってきました。
岩澤 まず大切なのは、起業家が主役であるということ。そして、その先の事業や起業家の成長に対して、ファーストライトがどれだけの長い時間をかけて、どのように関わっていくのか。それを明確に意思表示したいと考えました。
「ファーストライトがいたから、この産業が生まれた」と言われるようになることが、最終的な僕らの存在意義です。短期的なリターンだけではなく、超長期的な100年続くVCとしてチームをつくることで、それを実現していく。そう強い決意で挑んでいきたいと思っています。
編集:久川 桃子 | ファーストライト・キャピタル エディトリアル・パートナー
2022.11.21
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