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新マネージング・パートナー参画で、ファーストライトはアジアトップティアVCへの一歩を踏み出す

2021.11.08

お知らせ

新マネージング・パートナー参画で、ファーストライトはアジアトップティアVCへの一歩を踏み出す

ファーストライト・キャピタルに、日中での事業経験、投資経験のある頼 嘉満が、マネージング・パートナーとして参画した。代表である岩澤脩はどのような思いで頼を招き、どこを目指そうとするのか。その狙いを岩澤と頼の二人に聞く。

ーー頼さんは、マネージング・パートナーとしてファーストライトにジョインされました。以前は事業会社に在籍ですね。

頼:はい。直前は、中国のインターネット企業で役員兼日本代表を7年間務めていました。それより前は、戦略コンサルやVCでのキャリアがあります。久しぶりにVCに戻ってきて、とてもわくわくしています。

頼 嘉満 Chiamin Lai ファーストライト・キャピタル マネージング・パートナー
国際基督教大学卒業後、大手ERPベンダーインテンシアに入社、日欧にて企業のDXや業務改革プロジェクトに従事。その後、米系戦略コンサルティングファームモニター・グループでの経営戦略立案やアジア進出プロジェクト責任者を経て、DCM Venturesに入社。ベンチャーキャピタリストとしてfreee、Coubic等への投資実行を担当。2014年に中国スタートアップHappy Elementsに参画、CSO、日本上場責任者を経て、取締役兼日本代表として日中におけるコンテンツ、xR事業の展開を統括。IEビジネススクールMBAを修了。

ーーどのような経緯でファーストライトに頼さんがジョインすることになったのでしょうか。

岩澤:ファーストライトは2018年に立ち上げ、立ち上げフェーズが終わりました。

ここからはチームとして「アジアに攻めて出る」という中で、私ひとりの力ではやはり限界もあります。共同経営者として一緒に事業推進できるマネージング・パートナーを1年以上探していました。

一番こだわっていたのは、事業立ち上げ経験があること。泥臭いところから、ハイレイヤーの意思決定まで、ビジネスの様々な面を理解した事業経験者を探していました。

ただ、事業の立ち上げ経験がある方は、そもそも母集団として大きくなく、その中でVCにチャレンジしたい方はさらに少ない。なかなか理想の方にお会いできず、もう自分ひとりでやり切るしかないのかなと諦めかけていました。

岩澤 脩 Osamu Iwasawa  ファーストライト・キャピタル 代表取締役 マネージング・パートナー
慶應義塾大学理工学研究科修了。リーマン・ブラザーズ証券、バークレイズ・キャピタル証券株式調査部にて 企業・産業調査業務に従事。その後、野村総合研究所での、M&Aアドバイザリー、事業再生計画立案・実行支援業務を経て、2011年からユーザベースに参画。執行役員としてSPEEDAの事業開発を担当後、2013年から香港に拠点を移し、アジア事業の立ち上げに従事。アジア事業統括 執行役員を歴任後、日本に帰国。2018年2月にUB Ventures(現ファーストライト・キャピタル)を設立し、代表取締役に就任。

そんな時、知人から、「アジアのトップティアVCになる目標を簡単に諦めていいのか。本当にやり切ったと言えるまで人に会ったのか?」と言われたのです。その言葉にはっとして、恥を恐れずに、いろんな方にご紹介をお願いをしました。そんな中で、紹介されたのが頼さんでした。

最初のミーティングから、今後のビジョンが重なるのか重ならないのかという議論ができた。これが私にとっても非常に新鮮でした。

普通なら、「ファーストライトは何がしたいんですか」とか「私はどう貢献できるのか」みたいなコミュニケーションが多い。でも頼さんとは、発散し、広がっていく感覚を持て、もしかしたら一緒に経営をできるんじゃないかと感じたのです。

頼:正直なところ、最初はファーストライトを知りませんでしたし、ファーストライトに興味があったわけではありません。私の中では、新しいチャレンジをする際に、何をやるかよりも、誰とやるかが意思決定の重要なファクターです。

なぜかというと、ゼロイチは常に不確実で、その中で、みんなの意見をぶつけ合うことで面白いことが生まれます。意見が違ってもいいのですが、根幹になる認識が大きく異なった場合、共創するのが難しいです。

私自身はアメリカ、ヨーロッパに住んでいたこともあり、直近はアジアをベースにしてきました。スタートアップ界隈では、シリコンバレーの動向に注目している人が多く、アジアにおけるイノベーションについて詳しい人は少ない。アジアは遅れていると思っている人も多い。

岩澤さんとお話しする中で、彼が香港での事業立ち上げ経験があるからか、アジアや日本を客観的に捉えており、少し違うな、と感じました。

実際には、今はアジアがものすごく勢いがあって、成長しています。その割に意識を向けている人は多くないのです。シリコンバレーでも、アジアのビジネスモデルを真似しているケースが結構あるのですが。

岩澤さんは私が口にする前から、「アジアの方が日本より進んでいるよね」と言ったので、この人とはもう一歩踏み込んで話せる可能性があると感じたのが1回目のミーティングでした。

アジアのトップティアVCになる

岩澤:ファーストライトには、アジアのトップティアVCになるという目標があります。

そのもとにあるのが、私のアジアでの経営経験です。オフィスも家もない単身の状況から、5年で約13カ国のユーザー、約10カ国80名のメンバーまで成長を遂げました。この時に、言語、文化、国籍は違っても、一つのミッションのもとに強いカルチャーを持つチームをつくり、世界に挑戦できるということを実感しました。

垣根を超えて、そういった多様性をもつスタートアップをもっとサポートしていきたいし、もっと生まれてほしいと思っています。

頼:多様性やクロスボーダーなど、日本の枠組みにとらわれないことができないなら、私は興味ないし、私を誘わない方がいいと言った記憶があります。

VCを通じて社会変容、課題解決をしたい

ーー頼さんが事業会社からVCに転じようと思った理由は何でしょうか。

頼:前職では東京支社を一人で作り上げて、その過程で経営者として自己変容できたし、ゼロイチの楽しさや手触り感も持てた素晴らしい体験でした。

でも常に順風満帆だったわけではありません。経営者のレベルがその会社のレベルと言われます。前職では会社が成長するためには、リーダーとしての自己変容の重要性を身をもって知りました。とはいえ、自分自身を変えることは簡単ではない。私の場合、幸運にも苦言を呈してくれる支援者がいたからこそ、自己変容できました。その経験から、誰かの変革の実現を支援したいという思いが芽生えました。

日々経営しながら、自分の人生の価値って何だろう、人生を評価するものさしは何だろう、と考える。その中で、自分が大事にしてきたのは、やはりインパクトをどのくらい残せるかです。明日、もし死んでも悔いがない人生だったと言えるのだろうか、と。

今の私にとって、何か大きなインパクトを残せるとしたら、起業家よりもVCではないか、と考えたのがVCを選んだ理由の一つです。

インパクトとは何か。それは、社会変容もしくは、課題解決ができる仲間たち(起業家やファーストライトのメンバー)と経済や社会の成長に寄与していくことです。

それをやりたくてVCに戻ってきたのです。

ファーストライトには余白がある

ーーVCの中でもファーストライトに決めた理由は何でしょうか。

頼:こんなこと言うと岩澤さんに怒られるかもしれませんが(笑)、整ってないことが大きな理由です。

岩澤:整ってない!? いい意味でね?

頼:いい意味で。(笑)

一緒に作り上げるポテンシャルがまだあるなと感じたのです。私は起業家精神を持っている人間だと自負しています。すでに出来上がったルールがあって、この通りにやりなさい、という組織は合わないと思って。VCに戻るとしても、スタートアップのようなVCがいいなと。

岩澤さんが1号ファンドを経て、2号ファンドはもっと広げて、アジアのトップティアVCを目指そうとしていて、一緒に作り上げていく余白を感じたのです。これが最終的な決め手ですね。

岩澤:余白っていい言葉ですね。

今までは、個人商店に近いスモールチームでした。ここから、本当に10年、その先30年続いていくトップティアVCを作っていくための基礎作りがまさに今。

「いちキャピタリスト」ではなくて、「いち経営者」という目線を持てる方というのが、頼さんにジョインしていただいたポイントの1つかもしれないですね。

ーー共同経営者として、どんな補完関係を築いていきたいですか。

頼:共同経営者は、基本的な価値観が合わないと喧嘩別れになるのは目に見えているので、しっかり話し合いました。心理テストを受けてもらったりもしました。

大きな価値観の方向性は変わらないですが、能力的には、岩澤さんと私は全然違うと思います。

岩澤さんは、先生タイプ。教えるのが好きなのでしょう。考え方を整理して人にわかりやすく伝えるのがとても上手です。

岩澤:初めて言われました!でも、確かに、私の親も兄弟もすべて教師で、その延長上にキャピタリストがあるという感覚は今までもありましたね。

頼:私は、そういうタイプではなくて、直観情念派です。「一緒について来い!」という感じで、心の中ですぐ火がともるタイプです。

VCや戦略コンサル出身だったので、事業会社では、この人に泥臭い経営の仕事ができるのかと当初は心配してたらしいです。でも、それはあくまでもプロフェッショナルファームでの私で、「このことをやりたい」と思ったら、とりあえずスピード感を持って手を動かすので、経営陣たちもびっくりしていたようです。

なぜスピードを重視するかというと、不確実性が高いからこそ、自分が思い描く仮説を早く検証したいから。だからこそ、岩澤さんとは補完関係があるのではないかと勝手に思ってます。

岩澤:そうですね。私自身は新しい道を切り開く推進力はあるものの、経営者としては慎重すぎる傾向がある。それゆえ、これまでは事業のスピード感に課題がありました。今は、頼さんがそこを一点突破で進めてくれるので、うまく役割分担もでき、確実にスピードアップしています。お互いの強みをいかした補完関係ができていると思います。

チームの限界を超えていくために必要なこと

頼:ジョイン前、岩澤さんのアジアへの本気度を、体で感じることができず不安になったこともありました。私はパッション系の人間だからかもしれませんが、過去の経験から、この人も口では言ってて結局、やらない人ではないか、と。

「なぜ、私に声をかけたんですか?」と聞いても、「直観です」という答えが返ってきて、「直観ってどういうことですか?」と聞き返すと、「そうですよね…」と、明確な答えがない(苦笑)。

岩澤:なぜ答えに困ったのかを振り返ってみると、自分が事業をやってても起業家を見ても、事業は人で変わっていくもの。私の中で、こういうことをやりたい、というのはあるのですが、そこに頼さんがはまるから一緒にやるのかというと、そうではない。

頼さんが入るとどう変わっていくかを想像してみたのですが、全然想像できない。だからこそ、一緒にやりたいと思ったんです。簡単に想像がつくなら、それで終わりだったと思います。

頼:確かに、「イメージできないから一緒にやりたい」とおっしゃった。それで、ああ、そういうことだったら、大丈夫だと思えました。

岩澤:僕の中で明確な判断基準がありました。何をするか、誰とやるか、というとき、イメージが出来過ぎると、「いい未来」に進めない感覚がありました。

徹底的に考えたとしても、本当に想像できないとき、自分が自分の限界を超えていく。未開の地に進んでいけるか、全く合わないかどっちかでしょう。

自分はやっぱりアジアをやりたいと思っている。行きたいところはあるんだけど、どう行ったらいいかわからない。頼さんがいたらそこは行ける気がする。でも、どう一緒に行くのか全く想像つかなかった。そういう意味での「イメージがつかない」ということでした。

アジアのスタートアップとの接点は当たり前に

ーー頼さんのジョインでどんな変化が生まれていますか。

岩澤:今、この瞬間から、アジアのスタートアップとの接点ができて、それが当たり前になってる感覚があります。頼さんは、既にアジアの起業家とのつながりがあり、こんなに当たり前にアジアの起業家と話ができることに、驚いてもいます。

今までは、アジアに飛び込んで行っても「日本のVCです」、「日本人です、こんにちは」から始める必要があったので、2ステップも3ステップも飛び越えられる。

これからが本当の勝負です。長期的にはアジアで拠点を作り、現地のスタートアップとの接点を作って、アジア全域で多様なスタートアップを支援したい。そこに至るのに、まずは私たちがどういうチームを作り、どういう価値観を大切にするのかが本当に問われる。

私たちが実現できないと、そういうスタートアップを支援することもできない。今は、チームとしてはそこにフォーカスしていくフェーズです。

「事業が人で変わる」ということを、頼さんのジョインで実感しています。

多様性のあるチームが競争のカギになる

ーー頼さんは、VCへ戻ってきて、どんなことを感じていますか?

頼:中国テック企業では当たり前だったのに当たり前になってないと再認識したことがいくつかあります。

一つは、女性活躍の比率です。中国では女性起業家や女性キャピタリストが多く活躍しています。前職も含め、中国の企業ではマネージャー陣の半分は女性という企業も多いです。

もう一つは、外国人にとっても、まだまだ日本は活躍のハードルが高いということです。日本人で日本語を話せることが前提になってると痛感しています。

ファーストライトが、グローバルを視野に入れた多様性のあるチームで起業家集団を支援していけたら、新たな風が吹かせられるのではないかと個人的には思っています。

岩澤:これから5年、10年の時間軸ではProduct Led Growthという概念もあり、海外からスタートアップがどんどん参入しやすくなっています。

▼Product Led Growthについてはこちら
【解説】SaaSの新戦略。Product-Led Growthの全貌

逆に言えば、日本から海外にチャレンジできる可能性も広がっている。そうしたときに、多様性のないチームでは絶対に戦えない。いかに多様性のあるチームを作っていけるかが、長期的な日本のスタートアップの競争力に繋がっていくのではないかと思っています。

日本から、アジアで、世界で勝てるスタートアップが必ず出てくるし、それを作っていきたいという志があります。それを実現するために、私たち自身がアジアで勝負ができるVCでありたいと思っています。

ーー2号ファンドに向けての抱負を聞かせてください。

岩澤:リアル事業経験があるからこそ、起業家の気持ちに寄り添えるし、手触り感のある支援ができる。そのファーストライトのアイデンティティは変わりません。僕たちが大切にする価値観は普遍ですが、投資テーマは可変だと思っています。時代とともにテーマの変化はあるし、むしろそういった新産業の立ち上げをマネージング・パートナーが切り開いていくことが大事だと思います。

頼:投資領域はこれまでのBtoB SaaSから、広げていく予定です。投資地域もアジアに広げていきたいです。

岩澤:頼さんのジョインも含めて、2号ファンドはアジアトップティアVCに向かう第一歩になることは間違いありません。


編集:久川 桃子 | ファーストライト・キャピタル エディトリアル・パートナー
撮影:稲垣純也
2021.11.08

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